スタメン落ち→絶好機で空振りKも 侍主将&MVPへ成長、燕ドラ1が味わった“荒療治”

法大・松下歩叶【写真:小林靖】
法大・松下歩叶【写真:小林靖】

23日のドラフト会議で1位指名の栄誉→2日後東大に敗れる屈辱

 ヤクルトからドラフト1位指名された法大・松下歩叶(あゆと)内野手は27日、東京六大学秋季リーグの東大戦に「4番・三塁」で出場し、大学通算13号(今季3号)を放った。28日の東大戦も「3番・三塁」で同14号(今季4号)を放つなど4安打4打点の大活躍。その法大を率いる大島公一監督も、現役時代には近鉄、オリックス、楽天で主に二塁手として活躍し、ゴールデン・グラブ賞を3回、ベストナインを2回獲得。元プロの指揮官の目に、現在の松下の姿はどう映っているのか。

 ここ一番に強い。27日は1-0とリードして迎えた6回、法大打線は東大投手の代わり端をとらえた。2番手の江口直希投手(3年)に対し、2死一塁でチームの主将でもある松下が右打席に立ち、カウント1-1から真ん中低めのストレートを振り抜くと、打球は左翼席の中段に届いた。

 その瞬間、松下は一塁側の自チームのベンチへ向かって、言葉にならない歓喜の雄叫びを上げた。「いつも以上に集中していました。次の1点が大事だと思っていましたし、(5回終了時の)グラウンド整備の間にも『次の1点を取ろう』という話をしていたので、自分がそれを取れて、思わずうれしさが出てしまいました」と照れ笑いを浮かべた。

 23日のプロ野球ドラフト会議で1位指名の栄誉に浴したが、2日後の25日には東大1回戦に敗戦。勝ち点を落とすわけにいかない“崖っぷち”の状況に追い込まれていた。「いろいろな感情が入り混じっていますが、これからはそういう世界に入っていくと思うので、とにかく自分のやるべきことをやるという気持ちで臨みました」と揺れる胸の内を明かした。

法大・大島公一監督【写真:小林靖】
法大・大島公一監督【写真:小林靖】

日米大学野球選手権で侍ジャパン大学代表の主将に任命された

 そんな松下について、大島監督はプロの視点で「走攻守に隙がないこと、右打者で長打を打てることは相当魅力ではないでしょうか。近年は左打者が多く、右打者は非常に貴重で、その中でしっかりスイングをして遠くへ飛ばすことができるので、どこのチームにも必要とされる選手だと思います」と背中を押した。181センチ、85キロの大型内野手でもある松下。165センチの“小兵”で、巧打と堅守がセールスポイントだった現役時代の大島監督とは、全く違うタイプではある。

 順風満帆な道のりではなかった。今春のリーグ戦で、開幕戦の立大1回戦に1-2で競り負けると、大島監督はチームに喝を入れる意図だったのか、翌日の同2回戦で4番の松下をスタメンから外す荒療治を行った。しかも松下は0-5とリードされた4回、無死満塁の絶好機に代打で起用され、空振り三振。責任を一身に背負う姿が痛々しかった。

 そこからチームも、自分も調子を上げてきた。7月の日米大学野球選手権大会では、抜群のキャプテンシーを買われて侍ジャパン大学代表の主将に任命され、日本を5戦全勝優勝に導いた。自身も打率.318(22打数7安打)、1本塁打5打点をマークしMVPを獲得。この活躍でプロの評価は定まった。

「今はリーグ戦に集中し、終わってから(大島監督にプロの世界について)いろいろ聞きたいと思います」と語る。チームでも、侍ジャパンでも主将を務めた男は来年、池山隆寛新監督の下、今季最下位からの巻き返しに力を尽くすことになる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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