山本由伸の“究極メンタル操縦術” 大舞台で求めない完璧…右腕に息づく「打たれた経験」

ブルージェイズ戦で力投したドジャース・山本由伸【写真:ロイター】
ブルージェイズ戦で力投したドジャース・山本由伸【写真:ロイター】

山本由伸の探究心「とことん好きなんだと思います、野球が」

【MLB】ドジャース 3ー1 Bジェイズ(日本時間1日・トロント)

 世界中の注目を集めても、決して大きな顔はしない。どんな時も“自然体”を貫くのが、1つのルーティンでもある。ドジャースの山本由伸投手は31日(日本時間11月1日)、敵地で行われたブルージェイズとのワールドシリーズ第6戦に先発登板。6回96球で5安打1失点の好投で白星に導き、シリーズの対戦成績を3勝3敗に持ち込んだ。エースの投球で崖っぷちのチームを救い、運命の第7戦に歩を進めた。

 絶対に負けられないマウンドでも、落ち着いた投球を見せつけた。第2戦に先発登板した際は9回1失点で完投勝利をマーク。6日後の今回はブルージェイズ打線も研究を重ねてきたが、磨いた探究心でさらに上回ってみせた。

 大舞台でも「いつも通り」を心掛ける。完璧は求め過ぎない。「打たれちゃダメだと考えると、知らないうちに自分を苦しめることになってしまうんです。もちろん、打たれない方がいいですよ。でも、試合中に打たれたりする経験があるから楽しい。抑えられる喜びがある。真剣にやっているから、そう感じると思うんですよね」。マウンド上での“究極のメンタル操縦術”を、さらっと言い切る。

 優勝請負人。侍JAPANでの東京五輪にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、オリックスでの3連覇、そしてドジャース……。数多くの美酒を浴びるために、大舞台のプレッシャーに打ち勝ってきた。「(大舞台は)すごく盛り上がるイベント。選手だけじゃなくて、ファンもみなさんも本気で応援してくれる。その舞台で野球ができる。プレーする幸せを感じています」。

 理想の投球は「27球で27個のアウトを奪うこと」。ただ、現実的に可能とは言い難い。「ずっと100点のピッチングを目指していますけど、もし100点を取ったら……。そこからの投球は楽しくないんじゃないですか?」。鍛錬を重ねて、常に進化を続ける。

「とことん好きなんだと思います、野球が。楽しいから自分で考えることができる。勉強は……。僕にとってはそうじゃなかったのかなと(笑)。楽しいから時間を注げるし、打たれたら本当に悔しい。負けたくないって思えるから、成長に繋がるんじゃないですかね」

 描いた夢を叶えても、まだまだ先に歩む。誰も見たことのない景色に向かって突き進む。流行り廃りのない人生なんて、面白くない。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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