異次元だった山本由伸の“貢献度” 専門家が絶賛…数字以上の価値「ありえない」

ドジャース・山本由伸【写真:荒川祐史】
ドジャース・山本由伸【写真:荒川祐史】

数字以上にチームへ与えた有形無形の影響

 1998~2000年に3年連続ワールドチャンピオンとなったヤンキース以来、久しぶりの“ワールドシリーズ連覇”にこぎ着けたドジャース。快挙の最大要因として、ワールドシリーズ4勝中、3勝を1人でマークした山本由伸投手の存在を挙げる専門家が多い。

「今年のドジャースを語る時、ポストシーズンの活躍はもちろん、レギュラーシーズンで山本が1年間、ローテーションから外れることなく健康な状態で投げ続けたことは非常に大きかったと思います。シーズンとポストシーズンを含め、貢献度重視で“チームMVP”を選ぶとすれば、私は山本だと思います」。現役時代にNPB通算2038安打を放ったヒットメーカーで、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は、日本人選手としての“ひいき目”抜きで断言する。

 山本は今季、レギュラーシーズンでは30試合12勝8敗。リーグ2位の防御率2.49をマークした。ただ、今月3日(日本時間4日)に発表されたナ・リーグMVPのファイナリスト3人には含まれず、一方、ファイナリストの1人に名を連ねたサイ・ヤング賞でも、リーグトップの防御率1.97をマークしたパイレーツのポール・スキーンズ投手の受賞が有力と見られている。

 スキーンズを擁するパイレーツは今季、中地区最下位に終わり、ポストシーズンに進出していない。新井氏は「MLBのMVPやサイ・ヤング賞の選考では、チーム成績はほとんど加味されないようですが、山本の場合はチームに与えた有形無形の好影響が大きかったと思います。残した数字はそれほど派手ではありませんが、(降板後に)味方のリリーフ陣に勝ち星を消されたケースがあり、本来はもっと勝っていてもおかしくなかった。また、9月6日のオリオールズ戦で9回2死までノーヒットノーランの快投を演じましたが、あれを達成していたら、また印象が変わっていたのではないでしょうか」と惜しむ。

連投でリリーフ登板も「先発した時と変わらない球を投げていた」

 ポストシーズンに入ってからの山本は無双だった。6試合(先発5試合)5勝1敗、防御率1.45。特にブルージェイズとのワールドシリーズでは、第2戦で9回1失点完投勝利を挙げたにも関わらず、2日後の第3戦が延長18回の死闘となると、自ら志願してブルペンで準備した。そして第6戦に先発して6回96球1失点の快投を演じた翌日、第7戦の9回途中からマウンドに上がり、延長11回まで2回2/3を無失点に封じる超人的な働きを見せたのだった。

「そもそも今年のドジャースは、レギュラーシーズン後半からブルペン陣が不調で、ワールドチャンピオンまで駆け上がるのは難しいのではないかと思っていました」と新井氏。「ワールドシリーズ第7戦、1点ビハインドの9回1死で(ミゲル・)ロハス(内野手)が同点ソロを放つなど、誰も予想できないことが起きました。実力と運がかみ合わなければワールドチャンピオンになるのは難しいと思いますが、特に今年のドジャースは、運にも恵まれていたと思います」と見ている。

 その運を引き寄せたのが、山本の“常軌を逸した”働きだったと言えるかもしれない。新井氏は「信じられなかったのは、第7戦でリリーフした山本が連投にも関わらず、先発した時と変わらない球を投げていたことです。普通に考えたら、ありえないことです。たとえば、投手として中3日で第7戦に先発した大谷(翔平投手)は、二刀流の負担もあって、さすがに初回からボールがばらつき、休養不十分の影響が出ていました(2回1/3、3失点)。それと比べても、山本の投球は驚異的でした」と称賛する。

 さらに新井氏は「(今季の活躍で)山本に関しては、“出たて”のイメージが消え、メジャーリーグでトップランクの選手の1人という認識が定着すると思います。ネームバリューが上がり、MVPやサイ・ヤング賞の選考となった時、パッと顔が浮かぶ存在になるでしょう」と指摘。来季以降は山本に対する見方が変わり、結果的に野球人生を変えた1年となりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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