大谷翔平にまだ残る“伸びしろ” 打率&打点ダウンの要因…専門家が指摘した課題

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

両リーグを通じ最多得点「後ろの打者に打点を稼がせた証し」

 3年連続となるMVP獲得へ向け、ファイナリスト3人の中に名を連ねているドジャース・大谷翔平投手。6月に2年ぶりの投手復帰を果たし、二刀流が復活した今季、打撃では自己最多の55本塁打を放つなど、素晴らしい成績を残したが、あえて“伸びしろ”を探すとすれば、どこにあるのか。現役時代にNPB通算2038安打を放ったヒットメーカーで、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。

 今季の“打者・大谷”の成績を昨季と比較すると、本塁打は1本増で自己最多の55本に達したが、打率は.310から.282に、打点は130から102に下がった。ただ、四球が81から109に増えたこともあり、出塁率は.390から.392に少々上がっている。得点は134から自己最多の146に上がり、両リーグを通じて最多だった。新井氏は「出塁率が高く、得点が多かったということは、1番打者として塁に出て、後ろの打者に打点を稼がせた証しで、高い貢献度を示しています」と評価する。

 一方で「私は今季の大谷には3冠王の可能性があると踏んでいたので、打率が下がったのは残念です」と指摘。課題として「左投手の速いシンカーへの対応」を挙げた。

 大谷は今季、右投手に対しては打率.283(389打数110安打)、左投手に対しては.279(222打数62安打)で、大きな差はなかった。しかし、新井氏は「150キロ中盤以上の速いシンカーを内角へ投げ込んでくる左投手に対しては、分が悪かった印象です。ボール球に手を出してしまうケースが目立ちました」と指摘する。

「相手バッテリーが『振ってくれたらいいな』くらいの気持ちで多投してくる内角のシンカーに、大谷は強打者特有の『多投してくるなら、その球を狙って打ち返してやろうじゃないか』という発想で立ち向かったのだと思います。結果的に打ってはいけないボール球にまで手を出していました」と見解を述べた。

「インサイドの球を左方向へ打ち返す意識をより強く持ってほしい」

「インサイドの球を引っぱたいてやろうと思っていると、ライト方向へ引っ張る体の動きになりがちですが、大谷には逆に、インサイドの球をバックスクリーンから左方向へ打ち返す意識を、より強く持ってほしいと思います。そうすれば、ボール球にはバットが出かかっても止まるはずです」と提言した。

 また、得点圏打率は.247(93打数23安打)といまひとつだった。新井氏は「今季は打球速度が上がり、力強さを増したのですが、一方で、内野ゴロでも得点が入る打席で、力んでしまったのか、三振などで走者を返せないケースが目につきました。打率、打点が減った要因かなと思います」と振り返る。

 パワーアップの代わりに確実性が少々落ちたものの、新井氏が来季改めて大谷に期待するのは、2012年に当時タイガースのミゲル・カブレラ氏が達成したのを最後に誕生していない3冠王だ。「35~36歳になるまでは可能性があると思います。ヤンキースの(アーロン・)ジャッジ(外野手)と、どちらが先に達成するかを競うつもりで頑張ってほしい」とエールを送る。

 来季は開幕から投打二刀流で臨むことになりそうだが、どんな打撃でファンを驚かせてくれるだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY