根尾昂に募る“焦燥感” 名古屋で漏れた「なにくそ」…7年目で見つめる現在地

中日・根尾昂【写真:栗木一考】
中日・根尾昂【写真:栗木一考】

根尾昂「春先は良かった。でも、続かなかった」

 淡々と語る言葉の中に覚悟が滲む。ナゴヤ球場で行われている中日の秋季キャンプで根尾昂投手が汗を流した。プロ7年目となる今季は中継ぎに専念し、背番号も「30」に変えて臨んだ。だが、1軍登板はわずか4試合、防御率は7.94。2軍では42試合に登板し、3勝3敗1セーブ、防御率2.68。「良かったところはありましたが、打たれた記憶、記録が残っている。すごく悔しい1年です」と率直に打ち明けた。

 春先には確かな手応えもあった。「どんどん状態が上がっていって、それを1年間続けられるようにと思っていましたが、なかなか続かなかった」。体の使い方やコンディション、技術面が噛み合った感覚もあったが、「最後までは続かなかった」と現実も見つめる。一方で「これが続けばいける」という明確な感触を掴めたことも事実だった。

 ピンチや最終回、延長戦などプレッシャーの大きい場面での登板も多く、勝負どころを任されることが増えた。「いい場面で使っていただいて、すごくいい経験になりました。ただ、2軍と1軍では緊張感もバッターの質も違う。同じように抑えられるようにしたい」と冷静に分析する。

 しかし、秋季キャンプは井上一樹監督が帯同する高知キャンプメンバーには入ることが叶わなかった。高知キャンプ中には井上監督が「高知へ連れていってもらえなかったというのを感じて。しけたマッチに一生懸命、火をつけてあげる段階にきているのかなと思う」と話した事が記事になった。

 その記事こそ見ていなかった根尾だったが、ナゴヤ球場で浅尾拓也投手コーチからその言葉を聞いた。「あぁ、そうか。そりゃそうだよね、という感じでした。“なにくそ”ですけど、去年から立場は同じですし、自分の力で上がっていくしかないと思います」と悔しさを押し殺し冷静に受け止めた。

 来季に向けてのテーマを問うと、迷いはない。「去年を超える。それだけです。今季の良かった状態が1年間続いたとしても、どこかでやられたと思う。もっといい投手になるために、やることは決まっている。上で結果を出すことしかない」と力を込める。

 悔しさも、迷いも、焦りも、すべてを前進の糧に変えていく。手応えを胸に、“崖っぷち”の根尾は、次のステージを見据えている。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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