防御率72.00で育成降格「クビだろうな」 どん底経験も…中日27歳が果たす復活

秋季キャンプの練習に励む中日・近藤廉【写真:木村竜也】
秋季キャンプの練習に励む中日・近藤廉【写真:木村竜也】

2023年のDeNA戦で炎上も、屈辱を力に変える

“屈辱”を乗り越えた強さがある。4月に育成から再び支配下を掴み、1軍マウンドに立った中日の近藤廉投手。今季は16試合に登板し防御率2.20。覚悟を決めて突き進んだ左腕には「結果が出なかったらクビだろうな」とどん底を味わった過去がある。2度の育成から這い上がった27歳には並々ならぬ決意がある。

「真っすぐがある程度通用することが分かりました。ただ、もう少し変化球の精度を上げないと厳しいなと」。確かな手応えと新たな課題の両方が残った1年。それでも育成から2度目の昇格を掴んだ事は何よりも大きな成功だった。

 淡々と語る姿が印象的だ。4月に支配下登録を果たし、同月には2年ぶりとなる1軍復帰登板だったが、特別な緊張や不安はなかったと振り返る。「気にしないようにしていた」と話すように、心の中ではむしろ静かに火を燃やしていた。

 近藤は2020年ドラフトで札幌学院大から育成1位で入団。ルーキーイヤーの2021年3月30日に早々に支配下登録選手に昇格を果たした。しかし2023年には2度目の育成降格を経験。だが、もはや迷いはなかった。「2024年は自分の好きなようにやろうと。結果が出なかったらクビだろうなと思っていたので、色んな人の話は聞きましたが、最後は自分の納得いく形でやろうかなと」。

 その覚悟の“原点”は、2023年8月25日のDeNA戦にある。9回に登板し、わずか1イニングで5四死球、8安打、10失点。実に62球を投じ、敗戦。そのまま2軍へ降格となった。防御率72.00という屈辱の結果に終わり、シーズン終了後、戦力外も覚悟したが、立浪和義前監督が球団に「ああいう経験をした人は強くなると思うから、あと1年残してやってくれ」と進言し、育成契約での残留が決まった。

 後にその経緯を知った近藤。今では「気を使わせてしまったなと……。でもそういってくれるなら結果を出して、その言葉を正解にしないといけないなと」と恩返しの思いを胸に刻んでいる。

 今季は支配下復帰、1軍登板も果たしたが、まだ満足はない。「1軍にずっといることが一番の恩返し」と力強く語る。

 2度の育成降格を経て、落ちる怖さは常につきまとう。それでも、「自分のやりたいようにやって、それでダメなら仕方ない」と割り切ることで、気持ちを前向きに保ってきた。過去の苦しみを経た今、その姿勢こそが強さの源になっている。来季の目標は明確、「1年間1軍帯同」だ。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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