準硬式野球は「チャレンジ意志が上回る」 就活にも力に…勝利至上とは異なる“魅力”

甲子園で開催の準硬式野球東西対抗…マウンドに立った元スコアラー右腕
準硬式野球の世界には、硬式にはない“独自の魅力”があるという。11月21日に阪神甲子園球場で開催された大学準硬式野球の大会「東西対抗日本一決定戦 甲子園大会」で、愛知大・中村謙太投手は東日本選抜メンバーとして出場した。高校時代は甲子園に出場もメンバー入りはできず。準硬式という新たな世界で、聖地のマウンドに立つ夢を叶えた。
同大会は、全日本大学準硬式野球連盟の理念である「学業とスポーツの両立」に相応しい50人の選手を全国から選出。東西チームに分かれて甲子園を舞台に戦うもので、2022年から開催されている(第1回は雨天中止)。
東日本選抜に選ばれた中村投手は、2022年春に岐阜・大垣日大のメンバーとして甲子園に来たことがある。当時はギリギリまでレギュラー争いをしたが背番号をもらえず、自ら志願してスコアラーとして、史上初の昭和、平成、令和の“3元号勝利”を挙げた阪口慶三監督を支えた。
「ベンチでスコアラーとしてメンバーと一緒に試合を見ていても、やっぱり出たかったなという気持ちと、チームが(甲子園に)出ている喜びとが心の中にあって、ずっと色々な感情が混ざったような感じでした」
卒業後は愛知大へ進学。準硬式野球を始めて3年で叶えた念願の選抜チーム入りだった。これまで同大で過ごした日々と高校時代とを比較しながら、準硬式野球の魅力について、次のように語った。

喜びを噛み締める余裕、不安よりチャレンジ…就活の“ガクチカ”は「甲子園」
高校や大学の硬式強豪チームでは「自分で考えることもありますが、指導者から指示される割合の方が多いのでは」と話し、「ベンチから外されたらどうしようとか、そういう不安も、高いレベルでやっている選手ほど感じやすいと思う」と分析。一方で、準硬式野球ではそのようなプレッシャーを感じにくいという。
それは、硬式野球ほどの勝利至上主義的な風土がないからだ。「(高校時代と比べて厳しさは)ちょっと下がるんですけど、その分、仲間との喜びを感じられる余裕があると思います」。普段の練習で考えたことを試し、それをみんなで共有し、試合に生かすことができるため、「チャレンジしようという意志が(不安を)上回れる」ところも良さだと語る。
試行錯誤の日々を積み重ねて、ついに選手として立った甲子園。高校での悔しさを忘れたことはなく、「懐かしいとは思いませんでした」と振り返った。とはいえ、マウンドに立てば「初めて見る景色だったので緊張して、脳みそと体の歯車がはまらなくて難しかったです」と、やはり感動を抑えきれなかった。
これからは就職活動に力を入れていく。面接官から聞かれる定番の質問の“ガクチカ”(学生時代に力を入れたこと)も、準硬式野球だからこそ言えることがある。「準硬式でもう一度甲子園を目指して、主体的に取り組んで、選抜チームのメンバーとして甲子園に出られたこと」。そう誇らしく語るつもりだ。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
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