井口資仁氏ら1996年組が集結 群馬の名将・河原井氏が故郷で野球教室「成長のきっかけに」

野球教室を行った元青学大野球部監督・河原井正雄氏【写真:佐藤直子】
野球教室を行った元青学大野球部監督・河原井正雄氏【写真:佐藤直子】

井口、倉野、清水、澤崎ら1996年組全員が一致団結して実現

 群馬出身の名将が地元の野球発展を願い、野球教室を開催した。高崎市にある吉井中央公園野球場で行われたのは「第2回河原井正雄野球教室」。球都・桐生で育った青山学院大の河原井元監督の思いをサポートするために、日米球界で活躍した井口資仁氏、ソフトバンクの倉野信次投手コーチと清水将海3軍バッテリーコーチ、元広島で福井工業大の澤崎俊和監督ら、1996年に4年生だった9人が講師として参加。西毛地区のボーイズリーグに所属する86選手に、成長のコツを伝えた。

 快晴の12月6日。福岡、広島、福井など全国各地で活躍する同期9人が、1年ぶりの再会を果たした。昨年から始まったこの野球教室は、河原井氏の想いを受けた“1996年組”が発案。昨年の桐生開催に続き、今回で2回目を数える。投手は倉野氏、捕手は清水氏、守備と打撃は井口氏が担当。プロも教えを請いたい一流の専門家たちが約3時間にわたり、中学生たちに合った技術やトレーニング、考え方などアドバイスを送った。

 群馬と言えば、健大高崎や前橋育英など甲子園でもおなじみの高校が揃うが、今夏の県大会では準決勝が2試合ともコールドゲームとなるなど、強豪私立と公立の格差が生まれ始めている。桐生高OBの河原井氏は「群馬で生まれ育った球児たちが活躍すれば、地元はもっと盛り上がるはず」と考え、日頃から郷里の野球を巡る状況を気にかけてきた。そんな恩師の姿に立ち上がったのが1996年組だ。

 現在、東都大学野球リーグでは6季連続優勝と圧倒的強さを誇る青山学院大だが、その歴史の中でも1996年組は異彩を放つ。4年時には全日本大学選手権で3年ぶり2度目の優勝を飾り、全日本アマチュア王座決定戦では社会人野球日本選手権を制した住友金属に勝利。さらには、逆指名制度が採用されたドラフトでは井口氏(ダイエー)、清水氏(ロッテ)、澤崎氏(広島)の3人がドラフト1位、倉野氏はダイエー4位と、4選手がプロ入り。河原井氏は当時を振り返りながら「井口は群を抜いていたが、4人とは大したもんだ」と目尻を下げる。

指導を行う青学大OB・井口資仁氏【写真:佐藤直子】
指導を行う青学大OB・井口資仁氏【写真:佐藤直子】

今後も毎年開催予定「中学生にとって貴重な機会」

 同期の絆も深い。恩師のために群馬で野球教室をやろうと方向性が固まると、1996年組で高崎工出身の四十万善之氏が音頭を取り、全員が集まれるようスケジュール調整。「何十年ぶりかに全員が集まった」という第1回に続き、今年も全員が集合して野球教室の運営に当たった。

 左袖に「KAWARAI」の文字が入ったオリジナルパーカーを新調したり、現役当時に着ていた懐かしのジャンパーを持参したり……。顔を合わせれば、卒業から28年という年月が一気に巻き戻される。それぞれ携わり方こそ違えど、野球に対する想いは特別だ。「河原井監督のおかげで年に一度、同期が集まるきっかけができた」と井口氏は喜ぶ。

 昨年に続き、実行委員会として準備に尽力した四十万氏は「野球教室を開催できたことで、大学時代を通じて初めて河原井監督に褒められた」と笑う。現在は群馬西毛ボーイズのヘッドコーチとして「野球を通じて社会で活躍できる大人になってほしい」と願いながら指導にあたっている。開催に一役買った地元企業・三高電機株式会社の高橋宏道社長も河原井氏と1996年組に賛同。「野球をはじめ色々な分野で頑張る子どもたちの未来を応援したい。今回のように群馬の子どもたちが“本物”に触れられる機会は本当に貴重」と、2年連続で協賛を決めた。

 今後も毎年開催を恒例とする予定で、なかなか野球教室が開催されない県北部などでも実施していきたいという。「同期9人が集まってくれたことが嬉しいし、何より中学生にとって貴重な機会。これを成長のきっかけとしてくれれば。群馬の野球がさらに盛り上がっていくように、これからも活動を続けていきたい」と河原井氏。野球を愛する名将と教え子たちによる野球普及活動が、今後どんな展開を見せるのか、注目したい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY