王貞治氏が描く“野望”「のんびりしてはいられない」 85歳でも衰えぬ情熱「山を削ってでも」

都内で初開催された「日本野球界の未来会議」に豪華な顔ぶれが結集
通算868本塁打の王貞治氏(ソフトバンク球団会長)が代表を務める一般財団法人・球心会は10日、都内で「将来の子どもたちのために、今、野球界・スポーツ界としてすべきこと」をテーマに「日本野球界の未来会議」を初めて開催した。
代表の王氏、副代表の栗山英樹氏(日本ハムCBO=チーフ・ベースボール・オフィサー)、評議員の岡田武史氏(元サッカー日本代表監督)、アンバサダーに就任した井口資仁氏(元ロッテ監督)、上原浩治氏(元巨人、レッドソックスなど)、岩隈久志氏(元楽天、マリナーズなど)、立浪和義氏(前中日監督)らスポーツ界を代表する豪華な顔ぶれがそろった。さらに、球心会の「ビジョンパートナー」となった企業のトップ・役員が同席したことが画期的だった。
球心会は今年5月、「王貞治・大谷翔平を超えるような、世界を沸かし、子どもたちに夢と希望を与える世界的ヒーローが、野球界・スポーツ界から生まれ続ける未来をつくる」ことを目標に掲げ発足。支援を表明した企業9社を「ビジョンパートナー」とする契約を結んだ。
現在、「プラチナビジョンパートナー」に野村證券株式会社、「ゴールドビジョンパートナー」に株式会社ビズリーチ、「ビジョンパートナー」に朝日新聞社、株式会社エイジェック、株式会社オービック、株式会社電通、日本管財ホールディングス株式会社、株式会社博報堂、読売新聞社が名を連ねている。「日本野球界の未来会議」では、読売新聞グループ本社・山口寿一社長(巨人オーナー)と朝日新聞社・角田克社長が隣り合って座っていた。これだけのビッグネームや大企業が、ライバル企業のしがらみも超えて結集できたのは、王氏の求心力に負うところが大きいと言えそうだ。
王氏は「正直言って、用具を配るにしても、野球場を借りるにしても、お金がかかります。球心会の考え方を理解してくださる企業の方にも参加していただき、(資金を)有効に使っていきたいと思います」と説明する。
「スタジアムでなくていい、野球をやれる場所を少しずつ」
球心会は発足後、未就学児や小学生を対象にした体験型イベント「PLAY KIDS」を展開。今後はビジョンパートナーや国、自治体とも連携しながら、「ボールパーク構想」などのプロジェクトを本格化させていく方針だ。
特にキャッチボールができる公園など、野球ができる場所が減っている事情があるだけに、王氏は「僕自身は、山を削ってでも野球場をつくりたい気持ちがある。それなりのお金がかかることですが、野球場がなかったら野球はできない。スタジアムと呼ばれるような立派な施設でなくていいのです。野球をやれる場所を少しずつ、地方につくっていければいいなと思っています」と力を込めた。
来年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)には、ドジャース・大谷翔平投手も出場を表明。王氏は「大谷くんが出てくれるというのは、これほどうれしいことはない。彼が出てくれれば、日本でのWBCの盛り上がりは物凄く大きなものになると思う」と笑顔を浮かべ、「われわれにとって追い風だと思います。WBCだけで終わってはもったいない。野球界の底上げのために大いに生かしたいと思います」とボルテージを上げた。
85歳の王氏は「僕もこんな年齢ですから、のんびりしてはいられない」とも付け加えた。WBCでの“大谷効果”をテコに、企業の支援も生かして、野球振興を一気に進める構えだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)