歓喜の夜に決めた心 育成→叶えた夢も現ドラで移籍…新天地で咲かせる努力の“結晶”

茶野篤政が現役ドラフトでオリックスから西武に移籍
技も、心も鍛えた3年間だった。オリックスの茶野篤政外野手が、9日に行われた「第4回現役ドラフト」の結果、西武に移籍することが決まった。2022年の育成ドラフト4位でオリックスに入団した26歳が、新天地での躍動を目指す。
出場機会に恵まれない選手の移籍活性化を目指す「現役ドラフト」。外野手の厚いオリックスでは、競争が激化していた。左翼には西川龍馬外野手、中堅には中川圭太内野手や廣岡大志内野手、新人だった麦谷祐介外野手、右翼にはラオウこと杉本裕太郎外野手や来田涼斗外野手がひしめいていた。
茶野は今季の出場は3試合。12打数2安打、打率.167と思うような結果を残せなかった。それでも、大阪・舞洲でバットを振り続けた。2軍では116試合に出場して、ウエスタン・リーグ2位の打率.288、28盗塁を記録。ウエスタン・リーグの首位打者争いをしても、スタメンを外れる日々もあった。
試合に臨むために、室内練習場で鋭いスイングを繰り返す。「いつチャンスがあるかわからないんで。自分はしっかり準備をするだけですよね」。気がつけば、同僚が1軍に続々と呼ばれる。それでも焦りは表情に出さない。滴る汗をタオルで拭い、いつもヘルメットを深く被った。
新人年の2023年には91試合に出場。育成契約だったが、シーズン開幕前の3月24日に支配下選手登録されると、同31日に行われた西武との開幕戦に「8番・左翼」でスタメン出場した。育成ドラフトで入団した1年目の選手が開幕戦で先発出場するのは史上初だった。
「開幕戦は足がずっと震えていました。1打席目に立つまで(足が)ブルブルでした。(打席では)初球いこ、初球いこ、初球いこって、自分に言い聞かせていました」。初打席で内野安打をもぎ取ると、果敢にスチールを決めた。
3連覇の夜に浮かんだ気持ち「ビール掛けに行きたくない」
3連覇を決めた9月20日ロッテ戦。歓喜の直後、茶野はチームバスへ駆け込んだ。ビール掛けには参加していない。京セラドームから球団寮に直行。祝杯を受け止めるゴーグルも、シャワー後の着替えも必要なかった。
「もちろん、参加したい思いはありました。でも(1軍)ベンチに入れていなかったので、正直に『ビール掛けに行きたくない』という気持ちがあったんです。悔しいなという感情の方が強かったです。育成で入団して、こんなに1軍の試合に使ってもらえると思っていなかった。すごく良い経験をさせてもらいました。でも、やっぱり僕の中では優勝した実感がなかったんです」
冷静に見たあの日の夜景は、深く胸に突き刺さったまま。悔しい気持ちを味わったが後悔はない。必要とされて移籍する新天地。新しいユニホームで、その努力を糧にする。
(真柴健 / Ken Mashiba)