肌で触れた日本の魅力 心に刻まれた夜のコンビニ…“親日”台湾逸材にかけられた声

台鋼ホークスの曾子祐【写真:篠崎有理枝】
台鋼ホークスの曾子祐【写真:篠崎有理枝】

台鋼ホークスの曾子祐は昨秋西武のキャンプに参加

 来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」は初戦でチャイニーズ・タイペイ代表と対戦する。昨年のプレミア12で初優勝を果たし、国際舞台で存在感を増している台湾プロ野球(CPBL)では近年、若手選手の台頭も著しい。その中でも注目を集めるのが、台鋼ホークスの若き内野手、曾子祐(ツェン・ズーヨウ)だ。

 2022年のドラフト1位で台鋼ホークスに入団した22歳。チームが1軍に正式参入した2024年には「1番・遊撃」として定着し、打率.270をマークして新人王に輝いた。続く今季も120試合中116試合に出場し、打率.273と安定した数字を残してチームの中心に成長している。そんな若手の成長を後押ししたのが、昨秋に参加した西武の秋季キャンプだった。

 日本の練習スタイルを体感する貴重な機会となった。「台湾の秋季キャンプはどちらかというと練習中心です。でも西武のキャンプではチーム内の練習試合があり、とても新鮮でした。キャンプ後半には他球団との試合も組まれていて、台湾との違いに驚きました」と振り返る。守備練習では、選手たちの動きの速さに目を奪われた。「足の運び方や反応の速さなど、すべてが正確でスピード感がありました。『自分たちもついていかないと』という気持ちになりましたし、外崎(修汰)選手が若手のように全力で練習していたのが印象的でした」と刺激を受けた様子だ。

 環境面でも大きな違いを感じたという。中でも特に驚いたのが「食事」だった。「栄養士がついていて、選手ごとに考えられた食事が提供されていました。栄養のバランスも種類も整っていて『食べながら強くなる』という感覚でした」。自身もこのキャンプ期間中に体重が増え、今季の良好なコンディションにつながったと話す。

 また、西武の選手たちとの交流も忘れられない思い出になった。「初日の夜に蛭間(拓哉)選手がコンビニに連れて行ってくれました。『食べたいものある?』と聞いてくれて、たくさん買ってくれたんです」と笑顔を見せる。異国での温かい交流は、日本への親近感をさらに深めるきっかけになったようだ。「日本の各地の球場に行ってみたいです。中学生の時に東京ドームに行ったことがあります。次は、エスコンフィールドに行ってみたいです」と声を弾ませる。

 日本の緻密な野球と整った環境を肌で感じ、確かな成長を遂げた。日本で得た学びを胸に、台湾球界の未来を担う存在としてさらなる飛躍を誓う。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

RECOMMEND