台湾で話題の日本人がマウンドに 北海道からの「遠距離恋愛」が生んだ奇跡のオファー

王柏融の熱烈なファンの小貫さんが台湾で始球式を行なった
野球人気が高まる台湾のマウンドに、1人の日本人女性が立った。9月26日、「王」と書かれた手作りの帽子をかぶり、少し緊張した表情でボールを握るその姿に、観客から大きな拍手が湧き起こった。始球式を務めたのは、「北海道のおばあちゃん」と親しまれる小貫和恵さん。台鋼ホークスの王柏融外野手を日本ハム時代から応援し続けてきた名物ファンだ。
小貫さんが王を応援し始めたのは、日本ハムに入団した2019年。夫とともに球場に足を運び、手作りの「王」帽子をかぶってスタンドから声援を送り続けた。その姿はテレビ中継でも度々映し出され、いつしか台湾のファンの間でも知られる存在となっていた。
「試合に行くと、毎回のようにテレビに映っていました。球場で台湾の方から『写真を撮ってください』と声をかけられるようになって『どうしてかな』と思っていたら、台湾でも私の応援する姿が放送されていたんです。旭川のスタルヒン球場に行った時には『あなたに会いに台湾から来ました』と言われて、本当に驚きました。それから、台湾の方々との交流が広がりました」
王が2024年に母国・台湾の台鋼ホークスに移籍すると、その縁はさらに深まる。交流を続けていた台湾の友人を介し、球団から「始球式をお願いしたい」とオファーが届いたのだ。町内会のソフトボールチームで35年間プレーしてきた小貫さんは、その日を迎えるために練習に励んだ。
「同級生の野球経験者にキャッチボールの相手をお願いして練習しました。はりきって、いきなり90球も投げてしまって、通っている整骨院の先生からドクターストップがかかったこともありました。でも、どうしても良いボールを投げたくて……。台北ドームでの練習はうまくいったけど、本番ではちょっとずれちゃいましたね。でも投げられたことが何より幸せでした。今日は王さんもそばに来てくれて、一緒に写真まで撮ってくれました。一般のファンの私にここまでしてくれるなんて、球団には感謝しかありません」
台北ドームでは、王を応援し続ける日本人女性として小貫さんが紹介され、観客から大きな歓声が上がった。
「王さんがいなかったら、こんなにたくさんの台湾の友達はできませんでした。私にとっては彼が紡いでくれた『絆』なんです。ファイターズにはめんこい選手がいっぱいいますけど、王さんとは遠距離恋愛みたいに(笑)、北海道からずっと応援していきたいです」
「北海道のおばあちゃん」と親しまれる小貫さんの笑顔が、日本と台湾をつなぐ架け橋となった。