エ軍に賠償金150億円…急死した元投手の責任問題 和解で終結、4年続いた法廷論争

2019年7月に急逝したエンゼルス時代のタイラー・スカッグス氏【写真:アフロ】
2019年7月に急逝したエンゼルス時代のタイラー・スカッグス氏【写真:アフロ】

スカッグス投手は2019年7月に遠征先のホテルで急死

 2019年7月に遠征先のホテルで急逝したエンゼルスの左腕、タイラー・スカッグス投手。その遺族が球団に損害賠償を求めていた不当死訴訟は12月19日(日本時間20日)、陪審員による評議が続く中で両者の和解という形で終結したと、地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」などが報じた。エンゼルスには賠償金約1億ドル(約150億円)が課せられることになった。

 今回の和解は、31日間にわたる証拠調べを経て、陪審員たちが最終的な評決を出す直前に行われた。和解条件の詳細は守秘義務により公表されていないが、遺族側のリード弁護士であるラスティ・ハーディン氏は「遺族は今回の結果に非常に満足している」とコメントしている。

 注目すべきは、和解発表後に陪審長が明かした内容だ。陪審員団は評議を中止する際、エンゼルス側の責任を認め、遺族に対して総額約1億ドル(約150億円)という巨額の賠償金を支払うべきとの意見で一致していたという。これには、将来の推定年俸分だけでなく、精神的苦痛や、球団の過失に対する懲罰的賠償も含まれていた。もっとも、実際の和解金は機密事項。通常、和解金は「陪審員が提示しそうな最高額」よりも少し低くなるのが一般的ではある。

 2009年ドラフト1巡目(全体40位)指名でエンゼルスに入団したスカッグスは有望株として高く評価され、2012年にメジャーデビューした。大谷翔平投手が海を渡った2018年には24先発して8勝10敗、防御率4.02、125回1/3を投げ、先発ローテーションとして活躍。その矢先だった。翌2019年7月1日(同2日)、遠征先のテキサス州のホテルで死亡しているのが見つかった。死因は、強力な合成麻薬「フェンタニル」が混入した鎮痛剤の摂取による窒息死だった。

 薬物を渡したのは、当時エンゼルスの広報部長だったエリック・ケイ氏(現在は禁錮22年の実刑判決で服役中)。遺族側は、球団がケイの長年にわたる薬物依存を把握していながら適切な処置を取らず、結果として選手への薬物供与を許した「監督責任」があると主張。一方のエンゼルス側は、薬物摂取は選手の個人的な選択であり、球団に責任はないとして真っ向から対立していた。

 裁判の潮目が変わったのは、今週水曜日のことだった。陪審員たちが裁判官に対し、スカッグス投手の将来的な推定年俸に関する証言の読み直しを求めた。これは、陪審員がすでに「球団に責任がある」との前提に立ち、具体的な損害額の算定に入ったことを強く示唆するものだった。エンゼルス側にとっては、このまま評決を待てば1億ドルを超える巨額賠償が確定し、さらにブランドイメージが失墜するリスクがあった。一方で遺族側も、評決後の長い控訴手続きや、万が一の逆転敗訴のリスクを避け、早期に問題を解決するために和解という現実的な選択肢を取ったものと見られる。

 今回の訴訟は、プロスポーツチームにおける従業員と選手の管理責任を問う極めて重要なケースとなった。和解によって法的な結論は出なかったものの、陪審員が示した「1億ドル」という数字は、薬物問題に対する球団の監視体制がいかに重要であるかを球界全体に強く知らしめる結果となった。スカッグスの悲劇から4年。法廷論争に終止符が打たれることになった。

(Full-Count編集部)

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