巨人女子の“至宝”が米国へ渡るワケ 「日本の方がレベル高いのに」…語った熱い思い

女子として画期的な野球人生…中学でも高校でも全国大会V胴上げ投手
女子硬式野球選手もアメリカへ渡る。読売ジャイアンツ女子チームの第1期生としてプレーしてきた島野愛友利(あゆり)投手が20日、“巨人女子”の一員として最後の試合に臨んだ。来年8月開幕予定の米女子プロ野球リーグ(WPBL)に参戦する予定だ。
この日、今年3月に開業したジャイアンツタウンスタジアム(東京都稲城市)で「共立メンテナンス presents 女子野球Gタウン杯」が初開催され、巨人女子、埼玉西武ライオンズ・レディース、エイジェック女子硬式野球部の強豪3チームが総当たり計3試合を行った。3000円の指定席券約100枚は早々と完売し、863人の観客がスタンドに足を運んだ。
巨人女子にとって画期的なイベントだが、島野が左打席に入るたびに、スタンドの私設応援団から「ありがと、ありがと、島野!」と惜別のコールが送られていた。島野は「そう言っていただいて本当にうれしかったですし、こちらこそありがとう、という気持ちでした」と感慨深げに振り返る。
第1試合の西武レディース戦に「7番・二塁」でスタメン出場した島野が4回、1死二塁の場面で外角の緩い変化球をライト方向へ引っ張ると、打球は両翼85メートル、中堅107メートルの距離に張られたネットを軽々と超えていった。特大の2ランホームラン。チームも7-0で勝利した。一方、島野が同じく7番・二塁で先発し、試合途中から遊撃に回った第3試合・エイジェック戦には2-3で敗れ、3チームが1勝1敗で並んだが、得失点差で巨人女子が優勝を飾ったのだった。
島野がこれまで歩んできた野球人生は、女子として画期的で輝かしい。中学3年では強豪の大阪・大淀ボーイズで男子を押しのけエースナンバー「1」を背負い、全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップで全国優勝に導いた。兵庫・神戸弘陵高3年の2021年夏には、初めて甲子園球場で行われた全国高校女子硬式野球選手権大会・決勝戦に勝ち優勝。大淀ボーイズでも神戸弘陵高でも、全国V決定の瞬間をマウンドで迎え“胴上げ投手”となったのは島野だった。
「日本の方がレベルは高いのに…」名残惜しそうな宮本和知監督
2022年に発足した巨人女子の、第1期生4人のうちの1人が島野だ。チームは翌2023年に第2期生16人を加えて本格始動。登録は「投手」だが、打撃を評価され内野手として出場する機会が多かった。
そして今年11月、島野は新設される米女子プロ野球リーグのドラフトでロサンゼルスに指名され、海を渡ることを決意した。同ドラフトでは、この日対戦した西武レディースの里綾実投手らも指名されている。
島野と巨人女子創設から苦楽を共にしてきた宮本和知監督は「日本の方がレベルは高いのに……という思いもあります」と名残惜しそうだが、「人生経験という意味で良いのではないか。日本も日本で盛り上がっていきたいです」と背中を押した。
島野は「どちらのレベルが高いかは意見の分かれるところだと思いますが、どちらにも良さがあり、自分の成長のチャンスが隠れていると思うので、それを探しに行きます」とキッパリ。「無いものが形になっていくのは楽しみですし、女子に限らず、日本の野球界にどんな影響を与えるかも楽しみです」と付け加えた。
米女子プロ野球リーグはロサンゼルスの他、サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンを本拠地とする計4チームでスタートする予定。まだ未知数の部分も多く、成功が保証されているわけでもないが、島野はこれまでの野球人生同様、敢然と挑んでいく。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)