“逸材”ゆえに抱えるジレンマ「練習より重視」 新人王の課題、元コーチが指摘

大塚明氏、新人王のロッテ・西川の能力と課題に言及
新人王のさらなる飛躍に、前コーチも太鼓判だ。ロッテでチーフ打撃コーチ兼走塁コーチを務めた大塚明氏は今オフ、32年間所属したチームを退団。入団後初めて球界を離れ、来年は外からプロ野球を見守る。ロッテ一筋だったプロ野球人生。退団前のラストイヤーに指導した西川史礁外野手のポテンシャルの高さには、驚きを持って接していたという。
「日本代表を背負っていく選手になるでしょう。打撃はもちろんいいんですけど、守備もさらに良くなる。肩が強いし、運動神経もいい。さらに人柄がいいんですよ。この先、チームリーダーになっていくんじゃないでしょうか」
ドラフト1位でロッテに入団した西川は開幕から5試合連続安打を記録。だが、その後は不振に陥り、2度の2軍落ちを経験した。打撃スタイルを見直し、ミートポイントを捕手寄りにしたことで球の見極めが良くなり成績が向上。シーズン最終戦で規定打席に到達し、パ・リーグ6位の打率.281、同1位の二塁打27本を記録した。
11月には侍ジャパンに招集され、「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本vs韓国」では2試合連続で安打を放つなど猛アピール。ペナントレース中盤からの活躍はインパクトが大きく、パ・リーグの新人王に選出された。
初球からフルスイングする積極的な打撃に目がいきがちだが、リーグ単独トップの9補殺をマークした強肩も武器の1つ。守備力について大塚氏は「まだ目を切って打球を追うことはできていない。これからじゃないですか」と課題も挙げた。飛球が上がった瞬間に落下点を把握する打球勘が、まだ培われていないのである。

1年目から1軍で試合に出続けると普段の練習が不足する
「1年目から試合に出ていると、練習時間が限られてしまいます。ロッテは屋外球場が本拠地ですし、夏場は暑くてさらに練習時間が短くなる。本当はとことん練習して、打球勘を養ってから試合に出てほしいけど、その時間が足りません。担当コーチからすれば、無理してほしくないから、思い切ったことができません」
西川の場合は規定打席到達という目標があったため、シーズン中盤から試合に出ずっぱりだった。「史礁ほど試合に出ていると、体調が整わないこともある。新人だし、心も体も疲れます。そうなると練習よりも試合重視になる。少ない練習の中で、いかに本人に意識させるかを気にしながらやっていました」。今季は「外野守備」の肩書が外れたこともあって、無理に叩き込むよりシーズンを走り抜くことを優先させた。
走塁面も同様で「まだ、恐々やっている部分がある。走塁も大きなミスにつながってほしくないから無理はさせなかった」と振り返る。本来はフリー打撃中に二塁ベース付近に行き、より実戦に近い形で打球判断を養う。若手には300球近く練習させるのが大塚コーチ流だったが、今季の西川は体調を整えることを優先しただけに「来年になれば上達するんじゃないかな」と今後に期待を寄せた。
「今年に関しては1年間完走したのは大きい。体力がある」。そう評価し「守備にしても、走塁にしても、瞬間的な判断を確実に素早くできるかというところが重要。勇気の問題もある」と、さらなる成長に向けて克服すべき点を指摘した。
「史礁も来年はもう少し余裕が出てきたら、もっともっと練習して一流になれるんじゃないかなと思います」。今季の成績が上限ではない。走攻守とも、まだまだ伸びしろは大きいと感じている。
(尾辻剛 / Go Otsuji)