妻に引退相談も「それでいいの?」 夫婦で決めた“幕引き”…1年続行が生んだ僥倖

DeNA、巨人、オイシックス新潟でプレーした三上朋也氏【写真:湯浅大】
DeNA、巨人、オイシックス新潟でプレーした三上朋也氏【写真:湯浅大】

三上朋也はDeNA、巨人、オイシックスでプレーし今季限りで引退

 昨季限りで現役を引退した三上朋也氏は、DeNAや巨人で中継ぎとして活躍し、2024年からNPBイースタン・リーグへ新規参入したオイシックスに加入した。当初は1年で辞めるつもりだったが、妻の言葉に背中を押され、もう1年プレーを続けることを決断。そして昨年8月という早いタイミングで引退を発表した。その決断の裏には、どんな思いがあったのか――。

 2軍戦に新規参入し注目されたオイシックス。練習環境が厳しいのは分かってはいたが、球団の運営側にイースタン・リーグで戦うノウハウもなかった。始動当初は弁当や飲料水の用意もなく、自身で購入して練習へ。遠征は宿泊ではなく日帰り通い、ユニホームのランドリーもなかった。

 そんな中、球団からは「1軍レベルがどういう環境か知りたいので忌憚なく指摘してほしい」と求められ、元広島の薮田和樹投手、元阪神の高山俊外野手らとともに何度も話し合いを行った。NPB経験者の知名度や人脈を活かしてスポンサー探しにも協力した。「新たなスタートを切った球団を一緒に育てているような気持ちになり愛着が湧きましたし、貴重な経験をさせていただいたと感じています。何より、新潟に野球文化が根付いてくれたら僕たちが行った意味があると思いました」。

 所属した2年間でチームの成長を感じた三上だったが、「もともとオイシックスでの2年目はやらないつもりでいたんですよ」と明かす。昨年6月に3人目の子供が誕生したのだが、DeNA、巨人時代は育児で妻に負担をかけていたため2024年限りで引退し、子育てを手伝うつもりでいた。同年の契約更改前に球団に引退を報告するつもりだと妻に相談すると、意外な返答が返ってきた。

「終わり方それでいいの? 30年くらい野球をやってきたんだから、綺麗に区切りをつけて、終わってほしい。最後の1年をしっかりやって、みんなに挨拶して辞めた方がいいんじゃない?」

プロ生活は「本当に幸せ」…古巣ENEOSのコーチに就任

 妻の言葉に「その通りだなと思いました」と引退を翻意。2025年をラストシーズンと位置付けて“区切り”をつけることに決めた。引退を発表したのは8月29日。早いタイミングとなったのは、その翌日から古巣DeNAとのシーズン最終戦が控えていたからだった。

「横須賀での試合だったのですが、お世話になった人が一番多い場所だったので、ユニホームを着てグラウンドでみなさんに挨拶したかったんです。その後もほぼ、どのチームとも対戦が残っていたので、引退の挨拶ができた。直接、言いたいという気持ちがあったので」

 まさに夫婦で望むような形で選手生活に幕を下ろすことができた。プロとしてNPBで10年、オイシックスで2年間プレーした。「思い描いたようなプロ生活ではなかったですけど、すごい幸せだなって思います。本当にたくさんの出会いに恵まれました」。

 NPB通算では全て救援で368試合に登板し10勝16敗、23セーブ、121ホールドで防御率は3.22。中継ぎとして確かな実績を残した。来季からはENEOS野球部のコーチに就任する。プロ入り前に2年間プレーした古巣だ。

「トレーニングや準備など、選手と一緒に動けるコーチになりたい。『こうしろ、ああしろ』と指示をするというよりは、自分を使って羽ばたいて欲しいですね」。現役時代に培った経験を惜しみなく伝え、選手たちの成長を後押しする。指導者として新たな道を歩み始める三上氏の挑戦が、始まろうとしている。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

RECOMMEND

CATEGORY