相次ぐMLB移籍で“空洞化”の危機 NPB打者が失った技術「成果が出ていない」

Bジェイズ・岡本和真(左)とWソックス・村上宗隆【写真:ロイター】
Bジェイズ・岡本和真(左)とWソックス・村上宗隆【写真:ロイター】

現役時代にNPB通算2038安打を放った新井宏昌氏が分析

 日本を代表する長距離砲の相次ぐメジャー流出に、警鐘を鳴らす声が上がった。今オフもポスティングシステムを使い、NPB歴代日本人選手最多のシーズン本塁打記録(56本=2022年)を保持する前ヤクルト・村上宗隆内野手がホワイトソックスへ、本塁打王3回の前巨人・岡本和真内野手がブルージェイズへ移籍した。

「これは寂しいですね。ここ数年、日本の各球団の4番がどんどん抜けていっているわけですから。広島の鈴木(誠也外野手=カブス)、オリックスの吉田(正尚外野手=レッドソックス)、そして今度は村上と岡本……」。こうため息するのは、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、現在はMLB中継の解説などで活躍中の野球評論家・新井宏昌氏だ。

「最近一般の方々と話をしていると、日本のプロ野球よりメジャーリーグの方が面白いという声をよく聞きます」と証言。「各球団のエースや4番打者がどんどんメジャーへ行ってしまい、日本には『次の打席も観たい』と思わせるような魅力のあるバッターが非常に少なくなってしまいましたから」と指摘する。

 数字にも表れている。昨季のNPBの本塁打ランキングで、40発放ちセ・リーグ本塁打王に輝いた阪神・佐藤輝明内野手と、32発でパ・リーグ本塁打王となった日本ハムのフランミル・レイエス外野手を除くと、最多は阪神・森下翔太外野手とソフトバンク・山川穂高内野手の23本。仮に佐藤輝が近い将来メジャーへ行ってしまったら、日本人選手最多は20本台前半まで下がってしまうことになる。

 打率も全体的に下がっている。昨季の3割打者(規定打席以上)は、打率.309でセ・リーグ首位打者となった広島・小園海斗内野手、打率.301で2位の巨人・泉口友汰内野手、打率.304でパ・リーグ首位打者のソフトバンク・牧原大成内野手の3人だけだった。牧原大はパ・リーグ史上最も低打率の首位打者となり、小園もセ・リーグの歴代首位打者の中で、1962年の森永勝治氏(当時広島)の打率.307に次いで2番目の低打率である。

メジャー発のフライボール革命、バレルゾーン以前に習得すべきこと

 NPB打者の打率が全体的に下がっていることについては、選手の間からは「ここ数年、ピッチャーの球速が全体的にどんどん上がっていますから」との声が聞こえてくる。新井氏は「そういうこともあるのでしょう。しかし、160キロを超えたら別ですが、対戦を重ねていけばスピードにはある程度慣れるはず。それにウエートトレーニングの発達などで、打者側にもレベルアップしている部分はあるはずです」と首を傾げる。

 一方で「メジャーリーグからフライボール革命や、バレルゾーン(長打になりやすい打球速度と打球角度)などの理論を導入している日本の球団も多いようですが、目立った成果は出ていません。遠くへ飛ばすことや、いい角度で打ち出すことへ気持ちが向く選手が多い中、それ以前に、そもそもバットの芯に当てる技術が足りていない選手が多いと感じています」と語る。

 今さら日本人選手のメジャー志向は、そう簡単に止まらないだろう。ならば、次代を担う長距離砲を育成する体制を早急に整えないと、日本球界が空洞化しかねない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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