指名漏れ直後に届いたオファー 超大手の内定辞退…ぶっちゃけトークで切り拓いた米挑戦

慶大・常松広太郎、カブスと1月中旬に正式契約へ
カブスとマイナー契約で合意した慶大・常松広太郎外野手が、1月中旬にも渡米して正式契約を結ぶ。内定していた米金融大手「ゴールドマン・サックス(GS)」に断りを入れ、夢を追う22歳の秀才長距離砲。指名漏れを経験した昨年ドラフト会議の8日後、10月31日にカブスから届いたオファーの舞台裏を明かした。
「打球速度や長打率を評価していただきました」。打球速度はNPBトップクラスに匹敵する180キロ前後を計測したこともある。東京六大学野球リーグ戦では4年春に3本塁打。秋にも1本塁打を放った。
さらに面談では「マインドセットの部分を聞かれた」という。「『新しい生活に不安はあるか?』という質問に『僕は投資銀行のインターンにも行っていて、寝られなかったり、大変なことはありましたけど、環境にフィットするのは得意です』という話をして『自分の持っているリソースの中で頑張りたいと思っています』と伝えました」。
変に飾らず「本当にぶっちゃけです」と自然体で臨んだことが「好印象だったのかなと思います」と功を奏したと振り返る。「真意は分からないですけど、『ハートが強い選手が欲しい』という感じで聞いています」と合意に至った経緯を説明した。
ゴールドマン・サックスについては「関係値があって、大好きな会社」と言い、内定を断ってカブス入りを選択したことにも理解を示してくれたという。エリートコースを離れ、茨の道を進むことになるが「社会で生き延びていくためには、他の人とは違う属性だったり、経験値が必要だなと思いました」と迷いはない。
今後は1月中旬に正式契約を結ぶ予定。一度帰国し、取材の場を設定する運びとなっている。キャンプの日程など詳細が判明次第、2月中旬から3月上旬の適切なタイミングで再渡米して新天地での第一歩を踏み出す。
日本で突出した実績があるわけではない22歳。スタートがルーキーリーグになるのか1Aになるのかは未定で「話を聞いた感じだと、最初にルーキーとか若手を集めて、シート打撃とか紅白戦をやって、そこでクラス分けになるようです」。いきなり熾烈な競争が待っている。
引退後の目標も明言「とにかく大きいことをしたい」
小学生時代に米ニューヨーク州で4年間の生活経験があり、語学力に不安はない。一般的な生活については「大丈夫だと思います」と話しつつ、慣れ親しんだ日本食から離れる可能性は高くなる。「ニューヨークに住んでいる時は日本食のお店もありましたけど、僕が行くところに果たしてあるのか分からない。パンダエクスプレス(米国の中華料理店)とか食べようかなと思います」。そう話して笑いを誘う余裕がある。
ただ、異国の地で過酷な挑戦となるのは間違いない。現在、思い描くステップアップのビジョンについて「米国では24歳がポイントになると言われています」と説明。「それなら2年だと思っている」と2年先を見据える。
「2年で2Aに行ったら、ちょっと可能性が見えてくるんじゃないかと思っているんです」。そう話しつつ、柔軟な姿勢も示した。「実際に行ってみないと空気感や、それがいかにメジャーに近いのかはなかなか分からないと思う。そもそも、野球がもっとうまくなりたい。どんな環境でも、そこで頑張りたいと思っています」。
もちろん、最終的にはメジャーリーガーになるという目標がある。「メジャーの打席に立ちたいですね。実際に立った時、どんな気持ちになるんだろうなって思っています。いつか『これ現実なのかな?』と思えるシーンに立ち会えたら、死ぬ時に後悔はないだろうなと思います」。そのために地道に泥臭く、努力を続ける覚悟はできている。
仮に野球で成功できなくても、その先も人生は続く。取り組みたいことはいくつもある。「事業やキャンペーンとか、何でもいいんですけど、とにかく大きいことをしたいなとずっと思っています。もし野球をやめても、スポーツでやってきたキャリアを生かせればいい」。道は1つではない。
仲が良い友人には、司法試験に合格した者や外資系の投資銀行に入社する者もいる。建築家を目指してスイスの大学院に進学する仲間もいる。「他にも僕より優秀な友人がたくさんいます。『全員がクロスするタイミングがくればいいね』という話はしています。いつか必ず一緒に仕事ができる日がくる。その時が楽しみです」。友人と叶えたい夢は膨らむ。
その前に、今は個人的な夢に突き進む。「面白い人生になりそうだなと思っています」。ドジャース・大谷翔平投手ら、多くの日本人選手の活躍を目にする時代となったメジャーリーグ。マイナーリーグから挑戦する日本の若武者にも、ぜひ注目してほしい。
(尾辻剛 / Go Otsuji)