燕引退の兄と“同時出発”は「たまたまです」 女子プロ野球のレジェンドが現場復帰

「ZENKO BEMS」の川端友紀助監督【写真:宮脇広久】
「ZENKO BEMS」の川端友紀助監督【写真:宮脇広久】

ZENKO BEAMS入団、兄はヤクルト・川端慎吾2軍打撃コーチ

 女子硬式野球の強豪社会人チーム「ZENKO BEMS」が9日に埼玉・ふじみ野市内でミーティングを開き、ヤクルト・川端慎吾2軍打撃コーチの妹で女子野球界のレジェンドである友紀(ゆき)さんの助監督就任を発表した。“川端助監督”は2024年限りで現役を引退後、一時は芸能関係の仕事に就くなど野球の第一線から退いていたが、指導者として現場復帰。そこには、女子野球を盛り上げようとする人々の熱い思いがある。

「初対面では結構かしこまられることが多いのですが、全然気にせず、気楽に話しかけてくれたらうれしいです」。川端助監督は緊張気味のBEAMSの選手21人を前で、そう話した。

 川端助監督は現役時代、ヤクルトで通算1100安打を放った兄・慎吾氏と同じ右投げ左打ちの強打の内野手として、女子プロ野球リーグ(2021年限りで活動休止)や社会人チーム、侍ジャパン女子代表などで活躍。2018年限りでいったん現役引退するも、翌年にはエイジェック女子硬式野球部の選手兼ヘッドコーチとして復帰した。福岡県を本拠地とする九州ハニーズでプレーしたのを最後に、2024年に再び現役引退を表明した。

 野球の現場から遠ざかっていた川端助監督を「やっぱり野球でしょ。友紀は野球だよ」と口説いたのが、旧知のBEAMS・中島梨紗監督(侍ジャパン女子代表監督を兼任)だった。警備業や人材派遣業などを展開するゼンコーグループのCEOで、BEAMSのオーナーを務める海野弘幸氏とも面会し「女子野球に対する熱い思いをうかがって、私も指導者として関われたらという思いが湧きました」。

「ZENKO BEMS」の海野弘幸オーナー、川端友紀助監督、中島梨紗監督(左から)【写真:宮脇広久】
「ZENKO BEMS」の海野弘幸オーナー、川端友紀助監督、中島梨紗監督(左から)【写真:宮脇広久】

海野オーナー「監督は女子がやり、男性がサポートするのが理想」

 競技人口の減少が危惧されている野球界にあって、女子野球選手だけは増加傾向にある。侍ジャパン女子代表はWBSC女子野球ワールドカップを7連覇中で、NPB球団が運営に関わる女子硬式野球チームとして埼玉西武ライオンズ・レディース、阪神タイガースWomen、読売ジャイアンツ女子チームも誕生。イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が結成したアマチュア野球チーム「KOBE CHIBEN」は2021年以降、高校野球女子選抜チームと毎年試合を行い、女子野球を盛り上げている。

 ただ、中島監督は「確かに全体的に女子のレベルは上がっていると思いますが、本当に上手い選手がいるかというと、そうでもない。結局(歴代の女子選手で)川端が一番上手くて、それを超える選手は出てきていない」と歯がゆさも感じており、川端助監督を加えたスタッフで指導を強化していく意向だ。

 チーム創設11年目を迎えた海野オーナーの思いも熱い。BEAMSは元NPB選手の岡部憲章氏(元日本ハム、阪神投手)をシニアディレクター、宮川一彦氏(元横浜、内野手)をヘッドコーチに据えており、さらに昨秋、元侍ジャパン女子代表で2024年限りで現役を退いていた田中露朝(あきの)さんを臨時コーチとして復帰させ、その後正式なコーチに昇格させた。

 海野オーナーは「とにかく女子野球の指導者を増やしていきたいと思っています。岡部さんや宮川さんもいるけれど、女子チームの監督は女性がやり、男性陣はサポートに回るのが理想だと思っていて、特に川端さんや田中さんのような実績のある方々を野球界から手放したくない。中島監督の下で指導者として育ってほしいですし、今後もそういう環境をつくっていきたいです」と力を込める。

 BEAMSは昨年、夏の全日本女子硬式クラブ野球選手権大会で優勝し、リポビタン杯争奪プレミアヴィーナスリーグでは読売ジャイアンツ女子に次いで2位。今年は改めて、秋の伊予銀行杯全日本硬式野球選手権大会を含め、“3冠”を目標に掲げる。

 川端助監督は「たまたまですが、兄と同じ埼玉で、同時に指導者としてスタートを切ることになりました」と感慨深げである。兄・慎吾氏は昨季限りで現役を引退し、今年から埼玉県戸田市に本拠地を置くヤクルトの2軍で指導に当たり、BEAMSも埼玉県ふじみ野市が本拠地なのだ。ともに輝かしい実績を残した兄妹が、ともに新たな野球人生を歩み始める。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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