阪神戦でまさかの「実況やってみるか!」 関西人気女性アナが吹かせた“風”…生んだ潮流

読売テレビ・諸國沙代子アナウンサー【写真:神吉孝昌】
読売テレビ・諸國沙代子アナウンサー【写真:神吉孝昌】

読売テレビ・諸國沙代子アナウンサーは2025年に初の野球中継実況を経験

 大の阪神ファンを公言する読売テレビ・諸國沙代子アナウンサーは、2022年に初めてプロ野球中継のベンチリポーターを経験した。悪戦苦闘しながら取材やヒーローインタビューを続け、2025年には2軍戦で実況もデビュー。「本当にクタクタになりました」と当時を回顧した。

 東大を経て2015年に入社。阪神への思いを抱きながらプロ野球の現場で業務をこなしているなか、2025年の1月だった。小澤昭博アナウンスセンター長に別室に呼ばれ「野球の実況をやってみるか!」。突然の提案だった。
 
「すごく驚きました。リポーターをしている時は実況もしたいなっていう思いもありましたが、なかなか口に出すことはできなかったので……」

 入社11年目にして舞い込んだ大きなチャンス。2025年8月24日、ウエスタン・リーグの阪神対広島戦(日鉄鋼板SGLスタジアム)で“実況デビュー”が決まった。そこからは準備に追われた。例年にも増してファームの情報を収集。阪神だけでなく広島の選手も必死に調べ尽くした。「並行して実況の練習にも取り組みました。どれだけ描写ができるようになるか。思わぬプレーが起きても対応できるよう、心構えをして臨みました」。

 迎えた実況当日、球場へ向かう道中の緊張と期待は忘れられない。「“実際に私が喋るんだ”という感じでした。ファンの方が見ている中継に私の声が配信されることに、なかなか実感が沸かなかったです」。

 入念な資料整理と直前取材を行い、午後12時50分にマイクの前へ座った。「とにかく大変でした……」。1軍の中継とは異なり、解説者不在の「1人喋り」。しかも「オフチューブ”形式」と呼ばれる、モニター越しでの実況だったため、現場の細かな動きを把握するのにも苦労した。

「ランナーのスタートもモニターからは判別しづらいですし、打球がフェアかファウルかも瞬時には分からない。エンドランの際もスタートが見えていないので、100%の自信を持って描写できないもどかしさがありました」

甲子園の記者席から写真を撮る諸國沙代子アナウンサー【写真:本人提供】
甲子園の記者席から写真を撮る諸國沙代子アナウンサー【写真:本人提供】

男性中心の現場で広がる選択肢、系列局でも野球中継の女性リポーターが誕生

 約3時間、無我夢中にしゃべり続けた。「本当にクタクタになりました。後半になるにつれて滑舌が悪くなったり、集中力も欠けてしまったり……。野球の実況って“先読み”が大事になってくるのに、目の前のことに追われて後手後手になってしまった。本当に難しいですね」。反省は尽きなかった。

 ほろ苦い野球実況デビュー戦となったが、諸國アナの“挑戦”は大きな流れを生み出した。日本テレビ系列としては前例が少なかった、女性アナウンサーによる野球中継のリポーターが次々と誕生していったという。

「中京テレビや札幌テレビの女性アナウンサーがリポーターデビューした際、私の日本シリーズやクライマックスシリーズでのベンチリポートがきっかけになったという話を聞きました。少し持ち上げてくれている部分もあるかもしれませんが、本当に嬉しかったです」

 男性中心だった現場で、女性アナの仲間が増えることは大きな励みになる。「TBSテレビで世界陸上の実況を女性アナウンサーが担当されていたことにも勇気をもらいました。スポーツに情熱を持つ女性アナウンサーはたくさんいますし、活躍の選択肢が増えるのは素晴らしいことだと思います」。次なるゴールは読売テレビの野球中継解説者で阪神OBの赤星憲広氏とともに甲子園で1軍の試合を実況することだ。

「赤星さんが『早く上がってこい! 僕も何年先まで解説をやっているか分からないから』と激励していただきました。いつか叶えたい“夢”ではなく、現実の“目標”として、赤星さんと一緒に甲子園から中継をお届けしたいです」

 2003年の阪神リーグ優勝を、小学6年生の時に甲子園のスタンドで体感した。肌で感じたあの“地響き”のような歓喜を、今度は実況アナウンサーとして自らの声で伝えるために研鑽を積んでいく。

(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)

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