引退から5年後に150キロ連発…27歳で“異例の復帰” 突然届いたオファーに「不思議な感じ」

DeNAのデータアナリストに就任した島孝明氏【写真:本人提供】
DeNAのデータアナリストに就任した島孝明氏【写真:本人提供】

トライアウト後に異例の打診

 21歳の若さで一度は幕を下ろした野球人生が、思わぬ形で再び動き出した。元ロッテの島孝明氏は2026年シーズンからDeNAのデータアナリストに就任する。一線を退いた後、国学院大を経て慶大大学院で「イップス」の研究に没頭。スポーツ科学で培った知見を武器に、NPBの舞台へ帰ってきた。

 2024年11月14日、ZOZOマリンスタジアムで行われた12球団合同トライアウト。島氏はロッテのユニホームをまとい、マウンドに立った。引退から5年が経過していたが、150キロ台を連発。かつてイップスに苦しんだ右腕が、研究で培った理論を実践で証明した。

 その投球が、データ活用の重要性を知る球界関係者の目に留まった。トライアウト後、オイシックスからアナリストとしてのオファーが届く。島氏は「トライアウトがきっかけで声をかけてもらった。研究との両立も配慮してもらえたことが、大きかった」と振り返る。

 オイシックスでは、アナリストとしてゼロからの挑戦だった。計測機器の導入からデータ活用基盤の構築まで担い、現場へ数値を落とし込む「土壌」をゼロから作り上げた。

「不思議な感じだった」DeNAから突然の連絡

 新たなキャリアを着実に歩んでいた2025年10月24日。島氏のもとに一通の連絡が入る。それはDeNAからのアナリスト就任要請だった。「不思議な感じだった」と振り返った突然のオファー。NPB球団が求めたのは、島氏にしか持てない「2つの視点」だった。

 DeNAでは、データと現場をつなぐ“橋渡し役”としての役割を担う考えだ。数値を一方的に提示するのではなく、選手の感覚や直感も尊重しながら、納得感のある形でデータを現場に落とし込む。そのバランスこそが、元プロとしての経験と研究で培った視点を併せ持つ島氏の強みでもある。

「データがすべてではない。選手の感覚や勘も大事にしたい」。語った言葉には、アナリストでありながら、あくまで“現場目線”を失わない姿勢が滲む。データの精度やノイズにも目を配りつつ、現場との摩擦を最小限に抑えながら、勝利につながる意思決定を支える存在を目指す。

 現役時代に苦しんだイップス。それを機にスポーツ科学で学んだ知見を、今度は現場で生かす立場へと転じた。元プロ野球選手が、違う形でプロ野球の舞台に復帰した。かつての剛腕は第2の野球人生を歩み始めたばかりだ。

(岡部直樹 / Naoki Okabe)

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