現代野球に欠かせぬアナリストの“重要能力” 元プロが提示…勝利に導く「新リーダー像」

データ分析競技会…DeNAの島孝明1軍データアナリストが参加
初対面の相手にも伝わる説明力が、アナリストには求められる。「第5回野球データ分析競技会」のシンポジウムが15日、都内で行われ、元ロッテ投手でDeNA1軍データアナリストの島孝明氏がファシリテーターとして参加。自身の経歴を説明するとともに、アナリストの在り方についても言及した。
野球現場で指導・育成・分析に携わる指導者や、将来アナリストやデータ分析の人材を目指す学生を主な対象に、野球のデータ分析を軸としたキャリア形成の実例を共有することを目的に開催。ロッテの打撃コーディネーターである矢沢大智氏、ナショナルズでバイオメカニストを務める小笠原孝斗氏らとともに、現場で何が求められているかなどを説明した。
「アナリストの仕事と研究の共通点は、問題や課題を設定するところから始まります。何が問題なのか、なぜ成果が出ていないのかというところを洗い出し、どうしたら解決できるのか、仮説を設定します。そしてデータや情報を集めて、分析して、分析結果から仮説を支持したのか、次の課題は何なのかを探るのが重要なサイクルになっています」
東海大市原望洋高1年時から140キロを超える直球を投げるなど注目右腕で、高校日本代表にも選出された島氏は、2016年ドラフト3位指名を受けてロッテに入団。将来のエース候補と期待されたが、1年目にイップスを発症した。以降は制球難に苦しみ、1軍登板がないまま3年目のオフに戦力外通告。育成契約の打診を断り、21歳で現役引退を決断した。
引退後は国学院大に入学。中学・高校の教員免許を取得して卒業し、昨年4月に慶大大学院に進んだ。自らも悩まされたイップスの研究を続けながら、昨年はオイシックスのアナリストに就任。大学院に在籍しつつ、今年からDeNAで1軍データアナリストを務めている。
近年は学生野球でもデータ分析が重要な役割を担っており、多くの学生がシンポジウムを受講。アナリストに求められるスキルについて、島氏は「まずディスカッションと情報の翻訳がある。専門外の人と話すことが結構多い。そういう異なる分野の人にも分かりやすく説明できることが重要」と力を込めた。
「そのためには必要な情報だけを抜き出す力が必要かなと思います。伝えたいことはたくさんあるけど、その中から本当に必要な情報を抽出して、それを初対面の相手に対しても理解されるような言い回しに変えていくプロセスが鍵になる。伝える際にスライドやグラフ設計を、よりシンプルで一発で理解されるような構成にできるのかが重要になる」

新しいリーダーシップ…「変革型」と「共有型」
他者に分かりやすく伝えるという考えは、選手に接する際も同様である。専門的で難しい単語に嫌悪感を示すプレーヤーも少なくない。データ分析を理解してもらうために「日頃からLINEなどで『野球の分析のトレンドは、こういうものがあります』と発信したりして、共通言語を持てるような仕組み作りをやっています」と取り組みを明かし、「選手側の引き出しを高めるのが大事なところ」と強調した。
データ分析はプロもアマも進化が著しい。プロの2軍の試合ではベンチにiPadを持ち込み、リアルタイムでトラッキングのデータを見られるという。「今後は1軍でも進んでいって、アマチュア野球においてもそういうテクノロジーをどんどん活用していく流れになると思う」と予測する。
「その中で本当にチームの勝利に必要なデータが何なのかを絞っていく必要がある。学生野球の中でも、傾向を見て対策を考える視点を持っておくことが大切です」
役割が注目される中、アナリストのリーダーシップ論にも言及。世間一般的には「自分が引っ張っていく」「主導的にやっていく」というイメージが強いが「『変革型リーダーシップ』と『共有型リーダーシップ』の2つがあり、他者との関係の中で努力を促していく。心理的安全性や主体性を支えて、チーム全体がより良い意思決定を行える環境を整えていくところが、新しいリーダーシップの形と考えています」と説明した。
「1人でやるわけではないので、どのように周囲と協力してやっていくかというところで必要なスキルです。カリスマ的なリーダーシップではなく、他者の共感を得て信頼を形成していく力が必要。何をすべきか、どのようにすべきかを、分かりやすく説明していく。結果として他者に影響を与えて、チーム全体の機能向上に寄与できる存在になるのが、これからのアナリストに必要な部分です」
選手個人の成績が上がれば、チームの勝利にもつながる。そのためにはデータ分析が欠かせない時代。アナリストの存在感が高まり、プレーヤーから転身する学生も少なくない。今後の在り方を考える上で、示唆に富む内容のシンポジウムとなった。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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