「野球の楽しさ体験させて」に“批判殺到” 専門家が指摘する混同「分解できていない」

学年で変わる野球の“楽しさの違い”とは(写真はイメージ)
学年で変わる野球の“楽しさの違い”とは(写真はイメージ)

多賀少年野球クラブ・辻正人監督と東農大・勝亦陽一教授が提唱する「質の高い楽しさ」

 野球界で「楽しさ」を重視する指導が広がる一方、その解釈を巡って現場では混同が起きている。楽しませるだけで勝てるのかという批判に対し、全国制覇3度の実績を持つ多賀少年野球クラブの辻正人監督と、育成のスペシャリストである東京農業大学の勝亦陽一教授の答えとは。「楽しさ=遊び」というイメージを覆し、競技力の向上に直結する真の定義を深く掘り下げたい。

 勝亦教授は約10年前の出来事を振り返る。「子どもには野球の楽しさを体験させてほしい」と発信した際、楽しくて上手くなるはずがないという批判が相次いだ。当時を思い返し「楽しさを“分解”できていないし、それがもたらす効果が理解されていない」と分析。低学年と高学年では楽しさの質が異なり、年齢が上がるほど悔しさや困難を乗り越えた先の喜び、すなわち野球の深さを体感することが、競技を継続する大きな原動力になると説く。

 辻監督は、指導者が陥りがちな誤解を指摘する。楽しいとは単にワイワイと笑わせることではない。辻監督は「6年生の楽しさは全く違う。本気だ」と言い切る。自分たちで戦略に関わる野球の中で、作戦が的中した際の喜びや、仲間を称え合うハイタッチこそが高学年の味わうべき楽しさ。本気で勝ちにいく過程で得られる達成感こそが、子どもたちのエネルギーを最大限に引き出すという。

 常に楽しみ続けることは難しい。ミスによる悔しさや体力的なしんどさもある。それでも辻監督は、90分の試合時間の中で「相手よりも楽しむ時間をどれだけ多く作ってあげるか」が最終的な結果を左右すると語る。劣勢の場面でもエネルギーを出し切り、一気に逆転に結びつけるような爆発力は、選手たちが心から競技を楽しめている瞬間にこそ生まれるものであり、それは小学生だけに留まらない。

 勝亦教授は「楽しさの裏にはうまくいかない悔しさがある」と付け加える。失敗を経験し、それを克服しようと試行錯誤するプロセスこそが、野球の本当の面白さにつながる。この“質の高い楽しさ”を指導者が正しく理解し、提供できるかどうかが、選手の将来的な成長や野球への愛着を育むための分岐点となるだろう。

(First-Pitch編集部)

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