選抜準V…智弁学園の豪打を支える“珍指導” 自分の打ち方だけでは「上手くならない」

春の選抜で本塁打を放った智弁学園・逢坂悠誠【写真:加治屋友輝】
春の選抜で本塁打を放った智弁学園・逢坂悠誠【写真:加治屋友輝】

智弁学園・小坂将商監督が語るモノマネの“重要性”…野球上達に欠かせない観察力

 第98回選抜高校野球大会は、3月31日に行われた決勝戦で大阪桐蔭が智弁学園(奈良)を7-3で破り、春夏通算10度目の甲子園Vを達成した。2016年の選抜以来10年ぶり2度目の全国制覇を狙った智弁学園は一歩及ばなかったが、花咲徳栄(埼玉)との準々決勝で0-8と大量リードを許しながら15安打12得点で大逆転勝ちを収めるなど、豪打を印象付けた。

「打ち勝つ野球をやりたいと思っています。守りを固めるのが一番いいのかもしれませんが、自分は野球人生でずっとバッティングが好きだったので、打ち勝った時はめちゃくちゃ嬉しいです」。智弁学園を率いる小坂将商(まさあき)監督はそう述懐する。準々決勝の逆転劇は指揮官にとって、無上の勝ち方だっただろう。

 そんな小坂監督の持論の1つが「僕は観察力、洞察力に自信があります。バッティングでもモノマネが得意ですから。モノマネができないやつは、野球が上手くならないと思いますよ」というもの。選手たちにも推奨している。

 確かに、プロの一流打者にも、打撃フォームのモノマネが得意な選手は多い。NPB歴代18位の通算406本塁打を放った巨人・阿部慎之助監督は、ソフトバンクや巨人で主に代打の切り札として活躍した大道典良氏(ソフトバンク3軍打撃コーチ)のモノマネが天下一品で、2012年のオールスターでは突然、右打ちの大道氏のフォームを左打ちで披露し話題になった。

 自分に合った打撃フォームを固めることも大事だが、他人のフォームをマネることで、それまで自分になかった感覚をつかめたり、上手い選手の秘訣を体感できたりすることがある。「野球は観察力を持たないといけません。自分の打ち方ばかりやっていても上手くなりません」と小坂監督は強調するのだ。

智弁学園・小坂将商監督【写真:加治屋友輝】
智弁学園・小坂将商監督【写真:加治屋友輝】

普段の打撃指導にも生きるモノマネ「わかりやすく見せてくださいます」

 2年にして智弁学園の4番を務め、決勝戦で身長192センチの“怪物左腕”川本晴大投手(2年)からソロアーチを放った逢坂悠誠内野手は、「自分は中学時代から、巨人の坂本勇人選手などのモノマネが上手いと言われてきました」と胸を張る。

 小坂監督は智弁学園の主将として1995年夏の甲子園に「4番・中堅」で出場し、ベスト4入り。法大では4年の春・秋に2季連続で外野手として東京六大学のベストナインに選出され、その後松下電器(現パナソニック)で5年間プレーした。2006年4月から母校の監督を務めている。

「僕自身、(中日、阪神、カブスなどで活躍した)福留孝介が同い年なので、昔からよくモノマネをしてきました」と笑う。小坂監督は右打ち、福留氏は左打ちだが“支障”にはならないという。

 実は、小坂監督のモノマネの才能は、普段の指導にも生かされている。「僕、北川(温久外野手=3年)のモノマネとか上手いですよ。(網で)昆虫を捕まえにいくような打ち方をします」と笑わせる。

 当の北川は「監督さんは僕に限らず、いろいろな選手のモノマネをされます。『昆虫を捕まえにいくような打ち方』というのは、普段から注意されていることで、調子が悪い時に腕だけでボールを叩きに行ってしまうのを、わかりやすく見せてくださいます」とうなずく。

 一見強面の小坂監督だが、選手寮に住み込んで生活を共にし、私生活では柔和な一面も見せる。野球部員全員の誕生日を把握し、当日にはショートケーキを2個ずつ贈る細やかさ。北川は「オンとオフがはっきりしていて、寮では笑わせてくださいます。厳しくするところは厳しく言ってくださいますし、ほめてくださる時はほめてくださる。何が悪くて何がいいのか、はっきりしていて、『監督のために』と思って野球ができます」と心底信頼している。

 小坂監督自身は「時代は変わってきています。キツイことばかり言っても、選手はついてこないので、冗談も言わないといけない。とはいえ、間違った大人にはなってほしくないので、叱らないといけないこともあります」とした上で、「お預かりした以上、彼らの親でありたいという気持ちはあります」と力を込めた。監督と選手が一丸となって、夏に頂点を目指す。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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