少年野球で大切なPDCAの”逆サイクル” 失敗の競技こそできる…社会で成功する人材育成

通算4度目の日本一…関メディが取り入れている「科学的メンタルトレーニング」
課題を乗り越えたことがある脳は、社会に役立つ“価値”になる。沖縄県で3月に開催された「2026スプランナーカップ 第10回全日本選抜中学硬式野球大会」で2年ぶり2度目の優勝を飾った中学硬式チーム「関メディベースボール学院中等部」の選手は、新入部員が加わった4月に「SBT(スーパーブレイントレーニング)」の座学を保護者とともに受講することが、5年前から恒例となっている。
「SBT」とは、人間の脳に共通する学習機能などの脳科学や、ホルモン分泌量などの研究結果に基づいた科学的メンタルトレーニングで、スポーツだけでなく社員研修に取り入れられることも多い。野球界では、「エンジョイベースボール」のスローガンを掲げ、2023年夏の甲子園で107年ぶりに深紅の優勝旗を手にした慶応が導入していたことで話題になった。
SBTメンタルコーチ1級の資格を取得している井戸伸年総監督は、「野球は失敗が多いスポーツですし、子どもはグラウンド以外でも失敗することがたくさんあります。これをSBT流に解釈すると、失敗は子どもたちの“伸びしろ”なんです。こういう風に前向きに思考を展開していくことって、彼らをサポートするにも、(社会人になった時の)ビジネスの世界でもすごく大事なんです」と語る。
子どもたちは“伸びしろ”があることを自認するだけでなく、「失敗にしっかり向き合い、次にどう動くか」と考える習慣をつけることで、持続的な成長に繋がる。ビジネスの世界にも、同じように改善や成長を止めないための「PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクル」という考え方があるが、子どもの場合はこの逆を行く。

失敗から導き出した改善策を実践…成功体験を重ねて叶える理想
「子どもたちは(プランを立てる)方法を知りません。(グラウンド内外でたくさん失敗するし)そのシチュエーションに対して、自分がどういう状況に立っているかを認識し、『だからこういう風にやってみよう!』と思うことが大事」と井戸総監督は言う。
例えば、失敗を恐れず打撃練習に臨み、なぜバットにボールが当たらないのか、なぜ打球が理想の飛距離に達しないのかなどを考え、導き出した改善策を実践してみる。「ACD(アクション・チェック・ドゥ)」の順にサイクルを回し、徐々に状況が良くなっていく成功体験を重ねることで、理想を叶えるためのヒントを得る。井戸総監督は「まさに失敗が多い野球だからこそ、考える機会が多いはず」と深く頷いた。
近鉄、オリックスでプレーした井戸総監督は自身の高校時代について、「いろんな失敗があったけど、その後にどう考えてどうするべきか、“やり方”が分からなかった」と振り返る。「野球界でいえば後輩にあたる子どもたち」が、成長するチャンスを迎えた時に立ち止まってしまわぬよう、1年生が中学生活のスタートを切るタイミングで「SBTを通してそんな知識を得てもらっています」と語った。
このトレーニングの真の目的は、勝つことだけでなく「どうありたいかという短期的、中・長期的な目標をクリアしていくこと」。どれだけ伸びしろを埋められたかは「勝負事は負ける時だってある」とし、試合結果だけではかれないことを強調した。チームを通算4度目の日本一に導いた指揮官は、失敗から成功のヒントをひねり出し、いつか夢を現実にできた者こそが「人生の勝者です」と穏やかに語った。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
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