大人の「はぁ、疲れた」が削ぐ“子どものやる気” 中学強豪が保護者向け座学を行うワケ

関メディベースボール学院ナインの練習する様子【写真:喜岡桜】
関メディベースボール学院ナインの練習する様子【写真:喜岡桜】

中学硬式「関メディベースボール学院」が実施する“保護者向け座学”

 子どもたちの視線の先には、いつも“憧れの存在”がいる。テレビの中にいるスターに釘付けになり、好きなユーチューバーに笑い転げ、まるで乾いたスポンジのように様々なことを五感を通して吸収し、真似しながら学んでいく。そんな成長期の子どもの目に最も映っているのは、一緒に暮らしている保護者の姿である。

 総勢193人の中学生が所属している硬式野球チーム「関メディベースボール学院中等部」の井戸伸年総監督は、子どもたちの健やかな成長には「家で耳にする言葉がすごい大事」と語る。そのため、チームでは5年前から臼井博文メンタルコーチによる「SBT(スーパーブレイントレーニング)」という、ヒトの脳の言語解釈、課題解決のための思考など科学的根拠に基づいた座学を受講できる機会を、選手だけでなく保護者にも提供している。

 臼井氏の座学では、選手たちがメモを取るインプットと、グループで話したり登壇して考えを発表したりするアウトプットを繰り返しながら3時間を過ごす。選手全員が退出した後に、保護者向けの“トレーニング”が実施される。

 臼井氏によれば、「子どもは、大人が無意識に発している言葉や会話の語尾」をキャッチし、すぐさま自らの思考や感情に反映させていくという。特に「親が使う言葉がきっかけで夢や熱量を失うことがあるんです」と熱弁する。その代表例が、仕事から帰ってきた時や一日の終わりになんとなく口にする「はぁ、疲れた」だ。

関メディベースボール学院・井戸伸年総監督【写真:喜岡桜】
関メディベースボール学院・井戸伸年総監督【写真:喜岡桜】

保護者のネガティブな言葉が子どもに与える悪影響

 この短いフレーズが何を引き起こすのか。「はぁ、疲れた」という言葉を聞いた子どもたちは、仕事をすることは疲れる、楽しいことではないと認識する。その結果、両親の職業や大人になることへの憧れを失うだけでなく、学業やスポーツなどの目標に向かって頑張ることや、与えられた役割を果たすことに「消極的になっていく」と臼井氏は言う。

 このような思考に陥らせないように、大人は「『今日も一日頑張った。あ~楽しかった』と明るく言ってみせるのです」と力を込めた。

 普段使う言葉を大人も意識することで、夢に対する熱量を維持することはもちろん、他にも良い影響もあったと言うのは、井上参月(みつき)選手(3年)の母・由理さんだ。ネガティブな言葉を減らすことで「女親との会話量が減ってしまう年頃ですが、そうならずにいられています」と目を細める。

 参月くんと考えをすり合わせたり、体調の変化に気が付くことができたり、子育ての面でも役立っている。参月くんに「その言葉は相手を傷つけるよ」と注意されることもあるそうで、「子どもの上達のためには親も一緒に成長しないといけませんね」と笑う。

 今春から神奈川県で寮生活を始めた息子がいる井戸総監督も、「SBTは親も気が付くことが多いんです。(日常生活で使う言葉を見直すことは)子育てや野球のサポートだけでなく、仕事にも生きるものだと思います」と語った。

 人間は、言語を操る生き物だ。言葉が脳や心理状態に及ぼす影響を「子どもたちが学んでいても、親が同じことを認識していなかったらなんの意味もなくて。世の中には(無意識のうちに)ドリームキラー(他人の夢や目標を否定し、邪魔する人物)になってしまう人も多い」と井戸総監督。チームでは、子どもが最もミラーリング(親密な間柄の人物を真似する同調行動)する保護者や指導者も、昨日よりもっと尊敬される大人へと進化し続けている。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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