中学強豪が2年で縮めた“5秒” 全国Vに直結…ボール回しが「守備の指標になる」ワケ

全国王者・桐生第一中が徹底するボール回し…「5周28秒」を設定した理由
「ボール回しが守備力を測る指標になると思うんです」。3月に行われた中学軟式野球の全国大会「文部科学大臣杯 第17回全日本少年春季軟式野球大会ENEOSトーナメント」で、桐生第一中(群馬)が初優勝を収めた。齋藤健子郎監督が、“ボール回し”の精度がチームの守備力を測る指標になると語る背景とは。
ウオーミングアップ、キャッチボールを済ませ、内外野手問わずダイヤモンドの4箇所に散らばり、ボール回しに入る。時計回りや反時計回りに正確にボールを送る一般的なメニューだが、桐生第一中の特徴は“タイム制限”をつけて実施することだ。
「5周28秒で!」。目標を告げる齋藤監督の声が響くと、ホームから時計回りでボール回しを開始する。受け手の胸のやや左側に送球し、素早く握り替えてステップを踏み次の塁へ。中学日本一に輝いたチームだけに、正確で速いボールが送られる。この日は3回目で28秒を達成した。
設定したタイムは、齋藤監督が長年指導する中で見つけた“ギリギリのライン”。桐生第一中の現3年生たちは入学当初「5周33秒」を目指していたが、1年生の終わりには31秒をクリア。現在では28秒に縮まった。文字では数秒の差に見えるが、この差がもたらしたものは大きかった。
齋藤監督は熱弁する。「ボールを捕って相手のことを考えて投げるという、野球で最も使う動きを繰り返すので、守備の基本が凝縮されています。なので、正確にできるかが守備力を測る指標になると思っています。大体30秒を切ったあたりからエラーが減ってきた記憶がありますね」。
飛んでくる打球は選べないが、自身のプレーの精度は高められる。だからこそ基本的な技術を磨き、失点の可能性を減らす努力を怠らない。全日本春季軟式大会での5試合の平均失点は1.6で、失策はわずかに1。決勝戦は小雨が降りグラウンドも荒れる中、無失策で勝利を掴んだ。愚直に削り出した“5秒の差”が、大きな成果につながったと言っても過言ではない。

中学生の上達に重要な「ミスの言語化」
重要なのは、プレーの精度を評価するだけではない。「ミスが出ても、同じミスを続けさせないことが中学生には大事です」と齋藤監督。そしてこう続ける。「仮に送球が逸れてしまった時に『なんでダメだったのか』をちゃんと気づかせてあげることです。本人の中に根拠がないとプレーは変わらないですし、チームのプレーも良くなりません」と、“言語化”の重要性を語る。
「彼らが自分で気づけるかが本当に大事ですから」。あれやこれや指導したくなる気持ちをグッと堪え、成長を待つ。齋藤監督の姿勢には、スケールの大きな選手たちの、将来への期待が込められている。
(磯田健太郎/Kentaro Isoda)
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