打撃指導で「違和感は絶対いけない」 両リーグ首位打者が“表情観察”を大事にするワケ

「大人の野球レッスン」で指導する内川聖一さん(左)【写真:高橋幸司】
「大人の野球レッスン」で指導する内川聖一さん(左)【写真:高橋幸司】

ミズノ主催「大人の野球レッスン」で元鷹・内川聖一さんが打撃指導

 NPB通算2186安打、セ・パ両リーグ首位打者に輝いた名打者が、野球普及のためにバットを振るっている。横浜、ソフトバンク、ヤクルトで活躍した内川聖一さんと、大手スポーツメーカー・ミズノとタッグを組んでの「大人の野球レッスン」が4月下旬、東京都内で開催された。「現役を辞めてからも野球を広める形で、必要とされるのはありがたい」と語るヒットメーカーはどんな指導を行ったのか。そして、大人に技術を伝える意義とは――。

 現役時代からミズノの野球用品を愛用してきた内川さんと、商品を超えた“価値”をユーザーに届けたいという同社との思いが合致して実現したこのイベントは、昨年7月に続いて2度目の開催。教えを受けたのは、全国から抽選で選ばれたわずか28人と、実にプレミアムな空間だ。2部制で計4時間、たっぷりと一流の教えが伝授された。

「僕も引退後に草野球をやらせてもらいましたけど、めっちゃ楽しいし、皆さんすごく熱心にやられている。バッティングが良くなりたい、教えてもらいたい方々がいらっしゃるのは、野球に携わってきた者として本当にありがたいです」(内川さん)

 一流の教えとはいえ、決して難解ではない。「バットを構える位置は、傘を持つ位置が一番自然」などと一通り“基本”を説明すると、マシン打撃で軟式球を打っていく参加者のフォームを、まずはじっくり観察。そこから構え方、タイミングの取り方、スイングの仕方など気づきをアドバイスしていく。

 例えば、バットにボールが当たらない参加者には、構えたところで「手でバットの芯を触ってみてください」。芯の場所を確認し、ミートポイントに合わせることでコンタクト率を高める。内川さんが現役時代、打席で実践していたのを思い浮かべる人もいるだろう。

 競技者から初心者まで参加者のレベルは様々だったが、個々に合わせた助言によって快音を響かせられた時の笑顔は共通だった。「自分が変わったと感じた瞬間、ニコッとしてもらえる。それがこのイベントならではだと思います」と内川さんも快活に話した。

イベントの最後には一流の技術も披露した【写真:高橋幸司】
イベントの最後には一流の技術も披露した【写真:高橋幸司】

内川さんが考える、“広い意味”での野球普及

「バッティングに正解はない」という内川さん。だからこそ、指導をする際に最も注視することがある。教わる側の“表情”だ。「教える側が形を作ってしまい、教わった人が違和感になるのが絶対にいけない」。だからこそ、表情に曇りがないかを確認するという。

「今打っている打撃の形は、その人の自然な動き。その上で、もう少しこういう意識で振ればスムーズに打てるのでは、力強い打球がいくのでは、という考えでアドバイスします。付け加えるものもあれば、削ぎ落とすものもある。それで結果的に良くなってくれればいい」。子どもに教える際も同様で、教える側の考えを押し付けるのではなく、ニュアンスが理解しにくいからこそ、より噛み砕いた言葉で話すことが大事だという。

 参加者からも一様に満足の声が聞かれた。学童野球を教えている金丸晴彦さんは「自分の考え方を押し付けるのではなく、まず“見る”ことが大事だと改めて勉強になりました」。野球観戦が中心という宮野鷹志さんも、「構えを教えてもらっただけで当たると打球が飛ぶようなった。気さくに声をかけていただきました」と笑顔。遠く北海道から参加の島田亜希さんは、「外角が苦手でしたが、(バットを)真ん中に放り投げるイメージでと教わりました。忘れられない1日になりました」と感慨深げだった。

2部制で行われたイベントには全国各地から“野球ファン”が集結【写真:高橋幸司】
2部制で行われたイベントには全国各地から“野球ファン”が集結【写真:高橋幸司】

 大人に野球を教える意義について、内川さんが考えるのは“広い意味”での野球普及だ。

「子どもが誰に野球を習うのかと言えば、やはり大人。『自分自身を向上させたい』とイベントに来ていただいた皆さんが、子どもたちに教える際に、僕が言っていたことを伝えてもらえると思う」。最後のデモンストレーションでは、参加者が感嘆する鮮やかな右打ちも披露。子どもの頃、小久保裕紀氏(現ソフトバンク監督)の豪快アーチを見てプロ野球に憧れを抱いたように、“一流の凄み”を記憶に残してもらうことも大切だと考えている。

「僕が野球選手としてやってきたことの証しを残してもらっている。だから、いつまでもバットを振れるようにしておきたいですね」と内川さん。現役を離れて3年、色褪せない技術を通した普及活動は、これからも続いていきそうだ。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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