少年野球に多い「考えすぎて結果が出ない」 押し付け厳禁、ミスOK…評価する“変化の過程”

谷口容基さんの指導の様子【写真:本人提供】
谷口容基さんの指導の様子【写真:本人提供】

日本と中南米の違い…谷口容基さんが取り入れる指導法

 日本の子どもたちにも、伸び伸びプレーしてもらいたい思いがある。ドミニカ共和国など海外でのプレー経験が豊富な谷口容基さんは現在、関西を拠点にオンライン野球教室「DREAM SCHOOL」などで小中高生から大学、独立リーグの選手まで幅広く指導している。異国での挑戦が日本の野球を見直すきっかけにもなり、現在の指導に役立っている部分があるという。

「日本人は基本的に真面目です。考えすぎて結果が出ない光景をよく見てきました。中南米の選手は結果をあまり気にしません。恐れずにトライしていきます。例えば守備でエラーしても、グラウンドが悪い、俺は悪くないという感じの振る舞いをする。切り替えが早くて引きずらないので、次のプレーがしっかりできます。1個のエラーを気にしていた自分が恥ずかしいと感じるぐらいでした」

 谷口さんの野球教室では、ミスしても責めることはない。野球にミスは付きもの。ミスを気にして次のプレーに悪影響が出ることを危惧する。「失敗はOKにしています。ミスしたらダメだとなると、委縮して動きが硬くなる。新しいことにトライしなくなります。だから子どもたちに安心感を与えることを大切にしています」。そのためには密接なコミュニケーションが必要となる。

 なぜミスしたかを一緒に考える。どこを意識すれば改善できるかを、かみ砕いて分かりやすく伝えることを心がける。その中で動きに変化が少しでも出てくれば指摘するのがポイントだ。「『さっきまでグラブの動きが硬かったけど、今のは低い位置に落ちていてOKだよ』とか、子どもたちが変化しようとしているところを見逃さないように意識しています」。

 打撃でも初球から積極的に打ちにいく中南米の選手との違いを感じている。「日本の子どもは結果を気にしている。打たないとダメだという意識が見えます」。MLBを代表する選手の1人、エンゼルスのマイク・トラウト外野手も打撃練習で打ち損じることを例に挙げ、「年俸40億円の選手でもミスショットする。小中学生がミスなく打つのは難しいんです」と強調。結果を恐れず、思い切りスイングすることを勧める。

 重要なのはミスした後。「まずはベストを尽くしているかどうか。そして次につなげているかどうかです。もうちょっとこうしたら良かったと考えられればいい。打席でも同じ。なぜ打てなかったのか、分かっていることが大事」。修正力を磨くことで、成長につながる。

型にはめない指導を心がけると語る【写真:松本洸】
型にはめない指導を心がけると語る【写真:松本洸】

上級者と未熟な選手の“合同練習”が生み出す相乗効果

 もう1つ、心がけているのが、選手を型にはめないこと。それぞれの個性を生かす指導である。「コミュニケーションを取って、自分の考えの押し付けにならないようにしています。子どもたちがどのように思っているかを聞きます。それから選手たちが動作をしやすくなる提案をしています」。打撃も守備も走塁も、スムーズに動けることが最初の一歩となる。

 硬式野球部に所属した高校時代は3年間、ベンチ外。1度も公式戦に出場できなかったが、上達への努力を怠ったことはない。「全く打てなかったところから自分も変わりました。だから子どもたちの感覚が分かる。同じ目線に立って、共感して進められます。野球は難しいスポーツなので、難しく考えると、どんどん難しくなる。シンプルに今より投げやすくなった、打ちやすくなったというのを探します」。

 小中学生に動きを分かりやすく理解させるため、「自然とそうならざるを得ない環境を作ってあげる」という。例えばネットなどで一定の仕切りを設け、腕が横からではなく上からしか振り下ろせない状況を作る。スイングの際に前足が開いてしまう選手には、足が開く位置にバットなどを置き、当たらないようスイングさせる。「その方がアジャストしやすい」と説明した。

 そんな中、中南米での光景で強く印象に残り、指導に取り入れているのが上級者との合同練習だ。MLBのシーズンオフ、谷口さんも参加していたドミニカ共和国のアカデミーに、帰国したメジャーリーガーが参加。中学生と一緒にノックを受け、打撃練習やライブBPを行うというのである。「同じグラウンドでスピードやパワーを体感できるのは凄くいい経験になる」。谷口さんの野球教室では小学5、6年生と中学生が一緒に練習している。

「小学生は上のレベルの選手と一緒にやることによって、自分が経験していないレベルのパワーやスピード感を肌で感じることができる。それに合わせようとするので絶対にプラスになる。中学生からしたら、年下の前で変なプレーはできない。いい意味でプレッシャーがあるので、双方にいい刺激があります」

 上級者と、未熟な選手が一緒に練習することで相乗効果が生まれる。日本流に中南米のやり方をミックスさせた指導で、子どもたちの能力を最大限に引き出そうとする日々。柔軟な発想で、谷口さんの指導は続いていく。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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