管理野球に限界「4年連続で同じ失敗」 中学硬式強豪が“交換日記”を始めたワケ

青森山田リトルシニア・渡邊一真主将【写真:チーム提供】
青森山田リトルシニア・渡邊一真主将【写真:チーム提供】

青森山田リトルシニア・中條純監督が打ち出した“改革”

 管理野球の限界――。この壁にぶち当たっている球界の指導者は少なくないはずだ。中学硬式野球の強豪「青森山田リトルシニア」を率いる中條純監督は、その「限界」を吐露する。2021、2022年に日本選手権を連覇した後、4年連続で主要全国大会はベスト4が最高成績。「指導者が選手をレールに乗せて結果を出させる『管理野球』ではベスト4が限界」と考え、現状を変えようと改革に乗り出した。

 中條監督の言う管理野球とは、単に選手を縛り付ける指導を指すわけではない。例えばAという一般的に導き出される答えがある場合、A1、A2、A3を教えて「引き出し」を増やす。選手は高校進学後などにA1、A2、A3のいずれかを選択して実践する。それがチームを日本一に近づけ、かつ選手の自主性を育むために必要な工程だと考えていた。

 しかし、日本一が遠ざかる中、中條監督は自身の指導方針に対して懐疑的になっていた。「日頃、選手たちに『同じ失敗を繰り返すな。もっと頭を使って、このやり方がダメなら違うやり方でアプローチしなさい』と言うわりに、自分自身が4年連続で同じ失敗を繰り返している。すごく情けないし、方針転換しないといけないと思いました」。指導者が方針を変えるのは勇気がいるが、就任12年目にして大きく舵を切った。

 まず着手したのが、主将、2年生の学年リーダーと日記を通じてやり取りする「交換日記」の導入だ。選手は「○○が最近結果が出なくて落ち込んでいる」「監督とコーチの言うことが違っていて悩んでいる」などと気づいた実情をすべて書き記し、中條監督がそれに返信する。戦術や練習に関する提案から、日常生活や人間関係における問題点、改善点まで、内容は多岐にわたる。

青森山田リトルシニア・中條純監督【写真:加治屋友輝】
青森山田リトルシニア・中條純監督【写真:加治屋友輝】

渡邊一真主将「監督を日本一の監督にして、恩返ししたい」

「ベスト4の壁は、『この仲間と日本一になりたい』とか、『日本一の景色を親に見せたい』とか、私情ではない力が働かないと乗り越えられない。僕は『選手のために』という思いをより強くしないといけないし、選手には『この監督と一緒にこのチームで日本一を獲りたい』という気持ちを持たせたい。そこで、選手との対話を重視するようになりました」

 中條監督は交換日記を行う意図をそう説明する。実際、「いくら一緒に過ごしていても入ることのできない『選手の世界』の入り口が緩やかに開いて、選手の情報量が大幅に増えた」という。その情報をもとに指導の方法やタイミングを的確に判断できるようになり、一方で選手も意見を言いやすくなった。中條監督は「今はシンプルに野球が楽しい。ただのエンジョイではなく、選手と一緒に問題を解決するところに楽しさを見出せています」と手応えを口にする。

 選手も変化を感じている。交換日記を書く渡邊一真主将(3年)は「一方的に言われて管理される野球をするのではなく、自分たちでやろうと決めて行動しないとそれ以上の成長はない。監督の目からは見えないことや、自分にしか分からないことを文字にして共有し、監督と一つになろうとしています」と話す。

「自分の目指すチームを作って日本一になりたい」と立候補して主将に就任。日本一を狙えるチームを作る上で、中條監督との足並みは揃っている。「自分たちが日本一にならないとベスト4の壁は高いまま。選手のために全力を注いでくれている監督を日本一の監督にして、恩返ししたいです」との言葉が、何よりもそれを物語っていた。

 時代の変化に合わせて緩くなったり、甘くなったりしたわけではない。中條監督は「中学生は許す範囲を広げると緩むし、行き過ぎるし、調子に乗る。引き締めるところは引き締め、正しい道に正すのが僕の仕事」と力を込める。今でも選手が間違った方向に進めば、声を張り上げて怒ることもある。ただ、選手も自分たちで意見し、決めたことをした上で怒られるため、納得できるし浸透しやすい。指導者と選手がともに楽しみながら成長した先に、日本一の景色が広がるはずだ。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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