指導者の役割に変化「今は選手の話を聞く時代」 井口資仁氏が説く“失敗のすすめ”

「野球脳キャラバン」で日本代表監督が語った“選手との接し方”
野球の技術向上には、子どもたちの考えを尊重した指導も必要だ。10月10日、千葉県柏市内のグラウンドで開催された少年野球指導イベント「野球脳キャラバン」(野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」主催)に、野球日本代表監督の井口資仁氏が講師として参加。指導者・保護者との質疑応答で、選手への接し方で心がけていることを問われると、「選手の意見を聞くこと」をポイントの1つに挙げた。
「選手に指導者の意見を伝えるのではなく、選手の意見を聞いて、今何をしたいのか、何を悩んでいるのかを口に出させることが大事だと思います。昔は指導者から『ああしろ、こうしろ』と言われましたけど、今は選手がやりたいことを聞く時代。情報があふれていますし、密にコミュニケーションを取りながらやっていく必要があります」
かつては体罰を含めた厳しい指導が行われたが、現在は大きく様変わりしている。YouTubeなどにもさまざまな理論があふれており、子どもの頃から多くの情報に接することができる。以前のように、指導者の考えを一方的に押しつける手法だと、選手はついてこない。
メジャーリーグにも挑戦し、日米の指導方法の違いに触れた井口氏は「日本はコーチングで、アメリカはアドバイザー」と説明。日本は技術や考え方を教え込み、米国は助言して成長を促す。どちらも間違っておらず、両方のいいところをミックスさせるのが井口流である。
「いろんなものを手助けすることによって、選手たちの伸びしろが一気に広がるように感じます。小学生と高校、大学生では違いますけど、子どもたちは楽しく野球をやりながら、長所を伸ばしていく。そのお手伝いをするのがコーチ、監督の仕事だと思います」

保護者に求める姿勢「話を聞いてあげることが一番」
ミスしても責めない。自身の少年時代を振り返り「失敗したときも、あまり家で叱られたことはなかった。失敗したプレーについても、どういうことを考えていたのか聞かれた記憶があります」と話し「子どもの意見とか、その場の気持ちがどうだったのかを、聞いてあげるのが大事だと思います」と続けた。
野球にミスは付きもの。「プロ野球選手でも失敗はいっぱいある。失敗の中から学ぶことはたくさんあります。いっぱい失敗した方が成功への道は近くなる」。子どもはミスを恐れず、指導者や保護者はミスを頭ごなしに叱らないことも大切だと訴えた。
イベントに参加したのは千葉県内の小学生。成長期で、体格に差があるのは仕方がない。まだ体が小さい子どもへの指導については「小さい子でもバットを短く持てば、長打を打てる(体の大きい)選手よりスイングスピードが速いこともあります。その選手に合った打ち方を教えてあげることが大事」と説明した。

バットを短く持つことを「恥ずかしいと感じる選手もいる」という。だが「私はバットを長く持って三振している方が、よっぽど恥ずかしいと思う。短く持てばしっかり振れるんで、しっかり振らせることが重要です」と力を込めた。
食トレについての質問も出た今回のイベント。「食べて体を大きくすること、寝ること、勉強すること。これはやっていかないといけません」。今後の野球界を担う子どもたちには無限の可能性がある。この中から未来のプロ野球選手が出てくるかもしれない。野球に取り組む先輩として、井口氏は「夢や目標を強く持ってやってもらいたい」とエールを送った。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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