現在の主流は「ケースに入れる」 グラブを遠征バッグに入れなくなった理由
野球少年少女にも伝えたい、専門家に聞く道具の向き合い方【グラブ編】
時代は流れ、野球道具の種類やケアの仕方も変わってきた。中学生、高校生の球児の中にはグラブを専用のケースに保管、移動している選手も多く見られ、プロ野球では主流となっている。専門家に聞くと、形崩れによる捕球ミスを防ぎ、何よりも革が長持ちするという利点があるという。【楢崎豊】
前回、紹介した折れたバットの使い道に続き、元巨人の選手でスタッフとしてチームを支えてきた大野和哉さんに話を聞いた。長年、NPB球団で用具担当などを務めた“裏方のプロ”によると、プロ野球の世界では、最近10〜15年の間で、グラブの運び方に変化があったという。
「昔はボストンバッグの中にグラブ、スパイクを一緒に入れていましたが、最近はグラブを別にして運ぶようになりました。それでも、遠征先へのトラックに積み込む時は(グラブケースを)一番上にするように心がけていました。グラブの形が変わるのは嫌ですからね」
繊細な感覚が大事になるプロの守備では多少の変化も命取り。はめた感覚や手を閉じた時に違和感があれば、失策を引き起こすこともある。ただ、それは野球人である以上、ミスを肯定する理由にはならない。型を崩さないようにするのが最善策であり、今の選手のこだわりだ。
グラブケースを絶対に使ってほしい、と推奨しているわけではない。ここで野球少年少女に注目してほしいのは、グラブのケアの仕方についてだ。
「他の道具と一緒に大きな鞄に入れるのではなく、できればそれとは別に、袋などに入れてグラブを手で持ってほしいという気持ちはあります。できなければ、グラブの中にボールを1、2球入れ、グラブをゴムのバンドで止める。そして、袋にいれて、カバンの中にしまってもらいたいです。型を維持することで長持ちもするし、捕球もしやすくなります」
グラブの中に何も入れないと、潰れたりして型が崩れてしまい、捕球がしにくくなる。型が崩れたから、新調するというのはおかしな話。大野さんの言葉を借りれば、自分に合ったものを長く使うということが「野球選手にとってベストなこと」と言う。
プロ野球選手だからといって、頻繁にグラブを変えているわけではない。10年以上も同じグラブ一筋でプレーしている名手も多くいる。雨などで少し濡れてしまった場合、湿気はグラブの革にダメージを与えてしまうため、陰干ししている選手もいる。手を入れるところに新聞紙を入れて保管している選手もよく見てきた。