NPB最長記録の育成生活7年 ホークス戦力外の25歳が歩み始めた第2の人生
昨年戦力外で球団職員に、伊藤大智郎が過ごす“いつもと違うキャンプ”
新たな一歩を踏み出した。ソフトバンクが2月1日から春季キャンプを張る生目の杜運動公園。第3クール初日、このキャンプで最多となる3万2600人のファンが訪れた2月11日の日曜日、ファンの応対に追われながら、忙しなく動き回る1人の男性の姿がキャンプ地にあった。
伊藤大智郎、25歳。2010年の育成ドラフト3位で誉高校から入団し、2011年からソフトバンクホークスのユニホームに袖を通した右サイドハンドの投手だったが、昨オフに戦力外通告を受けた。右肘のトミー・ジョン手術からの回復途上にあって、トライアウトなども受けられず、現役を引退。ソフトバンクの球団職員として採用され、12月半ばからは会社員として第2の人生をスタートさせた。
伊藤氏が所属するのは、球団の事業統括本部事業運営本部のファンサービス部。ファンクラブの運営などを行う部署で、球団とファンを繋ぐ役割を果たす部署である。この日、伊藤氏は職員として入社後初めてファンの前に立った。ファンクラブ入会ブースに立ち、新規入会を希望するファンの入会手続きを行う仕事だった。昨季まで共に汗を流したチームメートたちを横目に、これまでとは違う立場でキャンプ地に立っていた。
「もちろん複雑な気持ちはありますけど、野球と関わることが出来ているので、この仕事に就けて良かったな、と今は思えます。最初は戸惑いましたけど、最後の方になったら入会手続きも出来たので自信になりましたね」
これまでと違って見えるキャンプ地の景色。チームメートたちのグラウンド上での声や、練習に励む姿を見ながら、こう語って、顔をほころばせた。