「勝っても負けても最後は菱川」監督も信頼寄せる花巻東エースの野球センス
打ってはソロ含む2安打1打点、守備でも好守を連発
何をやらせてもセンスはピカイチ。8回コールドの大勝で登板機会はなかったが、チームの基本方針は「勝っても負けても、最後は菱川」。花巻東のエース・菱川一輝投手(3年)は、仲間たちからも、佐々木洋監督からも絶大な信頼を置かれる。背番号「1」の右腕の存在感は、グラウンドのどこにいても変わらない。【川村虎大】
15日、岩手県営野球場で臨んだ全国高校野球選手権の岩手大会2回戦。花巻東にとっての夏の初戦は、1回戦を7回コールドで勝ち上がった高田だった。菱川は「3番・三塁」でスタメン。3点リードの5回1死には、初球を叩いて弾丸ライナーで右翼席へソロを放った。
「3番を任されているから、打たなければいけないというプレッシャーはなかった。仲間からの温かい声援もあって、しっかり振り抜けました」
この一発が合図になったように、6回に2点、7回には1点を奪い、8回2死満塁では4番・田代旭捕手(2年)が中越えの2点適時打を放って試合を決めた。合計16安打11得点の猛攻。菱川自身も2安打1打点と貢献した。「仲間に感謝したい」。快勝発進にも関わらず、試合後も謙虚に言葉を並べる。
その非凡さは、周囲の目を引く。打撃に限らず、三塁の守備でも5度の守備機会をそつなくこなした。7回無死の場面では、三塁線を襲った鋭い打球を逆シングルで捕球すると、ノーバウンドで一塁まで送球。好守でもチームを救った。ただ、最も輝くのはマウンドの上。最速147キロを誇る右腕は、いつでも投げられるように準備をしてきたという。
「野手をやっているので、ピンチの時は常に自分で気持ちの整理はしていました」。不測の事態に備え、継投の心構えは忘れなかった。練習試合では、あえて試合途中に野手から登板したことも。ブルペンで肩を作らなくても、試合で投げられる練習をしてきたという。
花巻東の背番号「1」を背負う“二刀流”にとって、偉大な先輩・大谷翔平投手の存在は大きい。「世界で活躍する姿を見るのは自分たちにとっても励みになる。自分は大谷さんのような活躍はできないですけど、負けないようなプレーをしていきたい」。負けたら終わる夏。「最後は自分」の重みは十分わかっているつもりだ。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)