投手もこなす京都外大西の2番打者 驚愕の2打席連弾で「憧れ」大谷翔平に近づけた日
準決勝・乙訓戦で快音、決勝は選抜出場の京都国際と対戦
打った瞬間に球場が沸いた。26日、全国高校野球選手権京都大会の準決勝が行われ、京都外大西は2年生の2番打者・西村瑠伊斗選手の2打席連続本塁打などの活躍で4-1で乙訓に勝利。11年ぶりの甲子園出場に王手をかけた。投手もこなす右投左打の2番打者。「憧れ」と思いを抱くエンゼルス・大谷翔平投手に少しだけ近づけた気がした。
相手の右翼手はボールを追いかけるのをやめていた。初回1死で迎えた西村の第一打席。「ヒットでいいから、コンパクトに打とうと思った」と捉えた直球は完璧な当たりで右翼席へ。さらに同点で迎えた3回2死一塁。第二打席で「スライダーを待っていた」と甘く入った球をバックスクリーンに2ランを放り込んだ。高校通算16号となる2打席連続弾は、公式戦初アーチ。「そろそろ仕事しなあかんなと思っていたので、今日は仕事ができました」と嬉しそうに振り返った。
打つだけではない。この夏の背番号は9だが、最速144キロの直球を投げる投手でもある。京都大会の初戦では先発を任され、3回5奪三振無失点の投球だった。投手もできて、本塁打も放つ。左打者の2番バッター……。西村が「憧れ」と口にするのはエンゼルスの大谷翔平投手。当然、憧れは人を強くする。素振りから「トップを早く作って、そこからコンパクトにバットを出す」と大谷を参考にして、練習に取り組んでいくという。
入学した頃は左投手が苦手だったと話すが、今大会直前に京都外大西・上羽功晃監督から貰ったアドバイスでそれも払拭した。「踏み出す右足が開いていたのをまっすぐ踏み込めるように」。助言通りにして放った2本塁打はいずれも左腕から。指揮官も「大会に入ってから、だんだん力が抜けている。左投手に体が開かずやってくれた」と成長に目を細めた。
25日(日本時間26日)、2番で出場した大谷もツインズの左投手・コローンからスライダーを完璧に捉え、右越えへ本塁打。苦手とされていた左投手だったが、35本のうち12本が左腕からアーチを放っている。同じタイミングでの“左キラー”ぶりは偶然とはいえ、モチベーションにもつながるはずだ。
打っても、よし。投げても、よし。評判通りの活躍で、甲子園まであとひとつ。決勝の相手は今春の選抜に出場した京都国際に決まった。京都ポニーに所属していた中学時代は、ポニーリーグ日本代表にも選ばれた実績を持つ。「高卒でプロに行きたい」と目標ははっきり見えている。「長い間甲子園に行っていなかったので京都外大西に来た。強いチームを倒して甲子園に出たい」。チームを引っ張る2年生の夢が叶うまであと少しだ。
(市川いずみ / Izumi Ichikawa)
市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。