開場から108年、カブス鈴木誠也の本拠地の物語 外野スタンド後方にある「客席」【マイ・メジャー・ノート】第6回

カブス・鈴木誠也【写真:AP】
カブス・鈴木誠也【写真:AP】

外野後方のビルの屋上に「ルーフトップ・シート」と呼ばれる観戦席がある

 風の街シカゴ。選手にとって4月はこの上なく残酷な月である。

 鈴木誠也外野手が躍動するカブスの本拠地リグレー・フィールドは、巨大なミシガン湖からの強風と横なぶりの雨にたたられた。4月18日からの7連戦では小雪も舞った。22日のパイレーツ戦はデーゲームが当日になって急きょナイターへと変更され、朝から準備をしていた鈴木とパ軍の筒香嘉智が球場を後にするまで15時間以上を費やした。

 悪天候にもカブスファンはめげない。晴天に恵まれた23日の大入りを除く6試合の平均観客動員数は約2万7500人。実際に“客席”から観戦した人数となればさらに膨らむ。

 リグレー・フィールドは外部にも「客席」があることで知られている。外野スタンド後方に道路1本を隔てて建つ複数のビル。そこが野球観戦の場として定着している。かつて貸しビルやアパートだった建物を不動産業者や投資家らが次々に買い取り、階下にバーラウンジ、屋上には「ルーフトップ・シート」と呼ばれる観戦用の席を設けて営業している。そこでの観戦を望むコアなファンも多い。驚くなかれ、過去には試合中にこっそりと抜け出した敵の選手が、ユニホーム姿のまま一般客とともに観戦をして監督から罰金を科せられたこともあった。

 ルーフトップを売りにする商売は、野球が文化として根付くアメリカの牧歌的な一面とも言えるが、経営側にとっては容認できることではない。当然、訴訟沙汰となった。しかし、09年に球団を買ったトム・リケッツ氏は、利益の17%を徴収することでビルのオーナーたちに04年から20年間の「お墨付き」を与えた。

屋上に何もないレンガ造りの一棟が目を引く

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