投票権の不正譲渡の発覚で物議 米国野球殿堂入りの選出方法における是非とは
殿堂入り選手の選出方法に記者が抗議
新年早々、メジャーを取り巻く環境がにぎやかだ。楽天・田中将大の短期渡米やA・ロッドことアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)の162試合出場停止など、“華々しい”話題の影に隠れがちだが、米メディアの間で熱い論議を呼んでいるのが「殿堂入り選手の選出方法」だ。
1月8日、米国野球殿堂は、通算355勝のグレグ・マダックス氏、同305勝のトム・グラビン氏、同521本塁打のフランク・トーマス氏の殿堂入りを発表。1人も選出されなかった昨年から一転、今年は順当なメンバーが選ばれ、一件落着かと思われた。
が、そうは問屋が卸さない。今年の選出にあたり、元マイアミ・ヘラルド紙の記者で、現在はESPNラジオでコメンテーターを務めるダン・レバタード記者が、自分の投票権をスポーツサイトのDeadspinに譲渡したことが発覚。「殿堂入り選手の選出方法の機能マヒに対する抗議だ」とするレバタード記者の行為に非難が殺到した。
事の顛末を伝える前に、殿堂入り選手が選ばれる過程を説明しておこう。
米国野球殿堂は、1936年の創設以来、選手の選出を全米野球記者協会(BBWAA)に一任している。BBWAAに所属するのは、基本的に新聞、雑誌、通信社の記者のみ。テレビやラジオのリポーターは含まれず、インターネット媒体にしか寄稿しないライターも基本的には含まれない。
殿堂入り選手に関する投票資格を持つのは、BBWAAに10年連続で所属したことのある現役会員と名誉会員。投票資格を持つ会員は、BBWAAの専属委員会が選んだ候補選手の中から最大10人に投票し、有効投票数の75パーセント以上を得票した選手が殿堂入りを認められる。また、有効投票数の5パーセントを獲得すれば、翌年の候補者に残ることが可能だ。