選手の頑張りに監督が涙 神奈川で公立唯一の8強、藤沢清流が手にした“誇り”
野球は下手だけど、野球が好きな選手の集まり
今春、創部初のベスト4入りを果たした藤沢清流(神奈川)の夏は、ベスト8で幕を閉じた。準々決勝で立花学園に延長11回の激戦の末、2-3でサヨナラ負け。それでも、私学優勢の神奈川で、公立唯一のベスト8進出。学校にとっても、春に続く創部以来最高の成績を収め、歴史を塗り替える結果を残した。
ゲームセットの挨拶を終えたあと、一塁側のベンチ前に整列する選手たちを、藤沢清流・榎本正樹監督は拍手で迎えた。「よくやった」という声が聞こえてきそうな温かい拍手だった。
試合後、拍手に込めた想いを尋ねると、それまで取材に冷静に対応していた榎本監督の表情が一気に崩れ、涙が溢れた。
「本当によく頑張ったなって。ここをずっと目標にやってきて、立派に戦った選手たちに拍手を送りました」
新チーム当初から『夏ベスト4』を目標に掲げてきた。春のベスト4は通過点。グラウンドは他部との共用のため、平日2日は狭いスペースでしか練習ができない。その中で、技術を磨くドリルや、フィジカルアップを狙ったウエートトレーニングで、個々の力量を上げてきた。
横浜スタジアムで行われた春の準決勝(対桐蔭学園)では5つのエラーと守りが崩れたが、この夏は5試合で無失策。「もう一度、横浜スタジアムに戻ろう」を合言葉に、ショートを守るキャプテンの田嶋陽人内野手を中心に守りを鍛え上げた。
榎本監督から見た、チームの強さはどこにあったのか。涙を流しながら、それでも嬉しそうに語ってくれた。
「人間がいいので。みんな、いいやつなんです。何でも一生懸命にやりますし、こちらの要求に応えて、ひたむきに取り組んでくれました。野球は下手ですけど、本当に野球が大好きな選手ばかり。私自身も毎日が楽しかったです」