大谷翔平は何を思う? 勝ちたい発言から310日…エ軍解体でMVPへのモチベーションは
シンダーガードら主力3選手を放出、ヤ軍ジャッジと熾烈なMVP争い
カオスな空間と化していた。トレード期限終了から15分後。エンゼルスのクラブハウスが、報道陣にオープンにされた。シンダーガードは神妙な面持ちで電話をかけ、まだエンゼルスの練習着を着たイグレシアスは、どデカいダンボール箱に次々と荷物を詰め込む。大谷翔平はユニホームに着替え中だったが、仲の良いマーシュが近寄って来た。別れの挨拶だったのだろう。グータッチ。最後にマーシュがとっておきの笑い話か、渾身の“ギャグ”でもかましたのか、大谷の爆笑する声が響いた。最後の瞬間まで交流を楽しんでいた。
「ファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好き。ただ、それ以上に勝ちたいという気持ちが強い」
衝撃的だった“勝ちたい発言”から310日。主力3選手がチームを去り、勝負のはずだったメジャー5年目のチームは解体された。球団はシンダーガード、イグレシアスと高額年俸選手の放出で約5900万ドル(約79億円)を捻出。ミナシアンGMはこの資金を元手に、史上最高年俸5000万ドル(約66億5000万円)とも言われる二刀流の再契約交渉に臨むのだろう。だが、来季こそ勝てる、そんな魅力的なチームにしない限りは……。「We Love Shohei!」と声を張ったミナシアンGMは片思いに終わってしまう。
とは言っても、エンゼルスとの再契約問題はオフに入ってから。残り59試合。104年ぶりの2桁勝利&2桁本塁打は時間の問題だろうが、両リーグ独走43発のヤンキース・ジャッジとの熾烈なMVP争いは続く。昨季もシーズン中盤でポストシーズン争いから脱落。大谷は「モチベーションを高く維持していくのはチームとしても個人としても、なかなか難しい部分はある」と悩める胸中を口にしていた。
当たり前だが、昨季の本塁打争いと違って、MVP争いは数値化できない。チームを勝利へ導くといっても、今や焼け石に水。いっその事、ポストシーズンを狙えるチームに移籍すれば、そんな悩み克服も簡単だったろうが……。試練の日々となりそうだ。
地区最下位のアスレチックス戦で逃げ切り勝ち。試合終了から19分後。大谷は足早にクラブハウスを後にした。いつもチームが勝った際はノリノリの音楽が爆音で流されるが、この日ばかりは“無音”。イグレシアスのいたロッカーには救援テペラが入居。シンダーガードとマーシュのいたロッカーは綺麗さっぱり空っぽになっていた。
この日、先頭打者弾を放ったフレッチャーは「トレード期限が来ると、毎回変な気分だよ。いつものことだけど、勝つことで全てが少しだけいい感じになるね」と選手の思いを代弁した。MVP争いへ難しすぎるモチベーションの維持。やはり目の前のことに全力で取り組むしか解決策はないのか。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)