壮絶体験経て「誰かのために」 元オリ戦士が山本由伸を“教材”に指導するワケ
南牟礼豊蔵氏が開業した接骨院には「Baseball CLINIC」もある
走攻守3拍子揃った外野手として1981年ドラフト3位で阪急(オリックス)に入団した南牟礼豊蔵氏は中日、阪神を渡り歩き、14年間プレーした。通算成績は546試合で打率.249、13本塁打、78打点、32盗塁だったが、インパクトある活躍で、ファンからは「トヨゾー」の愛称で親しまれた。現在、兵庫県西宮市に「みなみむれ接骨院」を開業。施術内容にはプロ経験者の視点での「Baseball CLINIC」もあり、よく教材にしているのはオリックス・山本由伸投手という。
2005年に開業した南牟礼氏だが、夫人はガン闘病の末、2010年7月に亡くなった。2人の子どもを抱え「そこからバタバタバタとあっという間です。上の子を学校に入れて、下の子は障がいがあって……。何をしていたかわからないくらい」。野球どころではなかった。「女房が亡くなってからちょっとしてから、独立リーグのコーチの話がチラッときたけどお断りしました」。今は接骨院でいろいろな人と接して「誰かのためになりたい」との気持ちで日々を過ごしている。
「みなみむれ接骨院」の施術メニューのひとつである「Baseball CLINIC」には子どもたちもやってくる。「中学生が多いですね。よく速い球を投げたいとか言ってきますけど、とにかくまずバランスを見てあげます。それでずれている感覚を戻します」。投げ方はその後になるが、そこで例にあげるのが山本由伸だ。「彼が野球以外の練習で、体にどんな刺激を入れているかを見せます。倒立とか片足立ちとか、ブリッジして体をひねりながら立つとか……」。
オリックスOBの南牟礼氏だが、山本と面識はないという。「彼がアップでしていることを動画にあげたりしていたので、それを見て取り入れた」という。知人を通じて、山本がトレーニングのことを聞いていたというトレーナーを訪ね、その内容を教えてもらい、実際に経験したりもしたそうだ。すべては、わかりやすく子どもたちにアドバイスするためだった。