伝説の“宇野ヘディング”で星野仙一はなぜ激怒? 「賭け」に勝った後輩が明かす秘話

打球がおでこに当たってランナーの生還を許した中日時代の宇野勝氏【写真:共同通信社】
打球がおでこに当たってランナーの生還を許した中日時代の宇野勝氏【写真:共同通信社】

連続試合得点を続ける巨人を「止めた方が10万だ」

 中日のエースナンバーと言えば「20」だ。杉下茂氏、権藤博氏、星野仙一氏らが背負った。野球評論家の小松辰雄氏も1984年から受け継いだ。前任者の星野氏もその力量、能力を高く買っていた。「辰雄はバッターでいっても2000安打を打っとる」と称賛したほどだ。そんな名誉ある番号を継承する前の1981年シーズンにもその評価を物語る出来事があった。

 その年、小松氏はプロ4年目。抑えからスタートして、7月半ばから先発に転向した。それからしばらくしてのことだ。星野氏からこう言われたという。「巨人を止めるのは俺かお前か(大洋の)平松(政次投手)だ」。当時の巨人は前年の1980年8月4日から連続試合得点を続けており「止めた方が10万だ」と持ちかけられた。「いいっすよ」。小松氏はこう返したそうだが、ちなみに、この時点で先発した回数も数えるほどで、完封したことはなかった。

 これも星野氏が小松氏の実力を認めていたからこそだが、もちろん、やるからには勝つつもりで言ってきたはずだ。そんな中で迎えた8月26日の巨人戦(後楽園)。先発・星野は、巨人打線を6回までゼロに封じていた。2点リードで迎えた7回2死二塁。巨人・山本功児の打球はショート後方へのフライとなった。アウトを確信した星野がベンチに引き揚げかけた時、まさかの出来事が起きた。

 ショートの宇野勝が打球を何とおでこに当てて、それが左翼フェンス際まで転がっていったのだ。その間に二塁ランナーが生還。打者走者の山本功児は本塁でアウトになり、同点は阻止したが、巨人はこれで159試合連続得点となった。巨人ストップのチャンスを逃し、星野はグラウンドにグラブを思いっ切りたたきつけて悔しがった。これが珍プレーの元祖でもある「宇野ヘディング」。同時にそれは星野氏と小松氏の勝負のさなかに起きていたわけだ。

“ヘディング事件”から約1か月…小松辰雄氏が巨人の連続試合得点を止めた

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