子どもの力を引き出す“心理的安全性” 強豪ボーイズが構築する選手と指導者の信頼関係
京葉ボーイズの育成を統括する稲田秀一監督は、子どもたち全員と言葉を交わす
中学硬式野球の「東都クラブ京葉ボーイズ」は3チームを編成。それぞれが切磋琢磨し、レベルアップに励んでいる。3チーム中、育成を主眼にした「八街京葉」と「京葉下総」を統括する稲田秀一監督は子どもたちとどう接し、心技体を育んでいるのか。何よりも重視しているのは「信頼関係」の構築で、それができないと何も始まらないと語る。
練習の合間、稲田監督は積極的に選手たちに話しかける。時にはユーモアを交え、子どもたちの笑顔を引き出す。練習の際には必ず選手一人一人と言葉を交わすように努めているという。それが最も重要なことだと力説する。
「会話しながら、どういう表情をしているか、元気なのか、何か不安なことは抱えていないか。そうしたことを感じ取るようにしています。まずは子どもたちとラポール(信頼関係)を築くことに時間と力を注ぎます」
指導者と選手に信頼関係が生まれれば、子どもたちは心理的安全性を得る。これを得ることで、選手は持てる力を発揮できるようになるという。トップチームの「京葉ボーイズ」が毎年のように全国で上位に進出し、「八街京葉」と「京葉下総」の選手が順調に成長曲線を描くのも、チームのシステムや関口勝己総監督(京葉ボーイズ監督)の存在が「選手に心理的安全性を与えているから。信頼関係があるからだと思います」とうなずく。
一方で厳しさも必要になると説く。時には選手を叱ることもあるという。ただ自分の感情の赴くままに叱ることはない。「愛情を持って接することが大事だと思います」。例えば個人を叱る場合は必ず1対1になって行う。チームの活動理念である「アスリートが中心」という考えの“アスリート・センタード”に加え、時には厳しさを交えながら指導する。
選手に望むのは「続けることの才能」を身につけること。「バットを毎日振るとか、努力し続ける才能を身につけてほしいですね」。ラポールで結びついた指導者と選手。一方通行にならない関係も強さの秘訣だ。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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