“10m飛ばない”バットを試合でも使用 中学ボーイズが実践…先を見据えた選手育成
低反発の金属バットを練習試合でも使用…真の打撃習得に努める
群馬・前橋市のNPO法人「前橋中央硬式野球倶楽部(以下、前橋中央)」は中学硬式で2チームを編成。体の成長スピードに合わせ、早熟型の選手で「前橋ボーイズ」、晩熟型の選手で「前橋中央ボーイズ」を構成し、活動している。将来を見据えた指導方針が根本にあり、使用するバットは竹製と低反発の金属製。練習試合でも低反発の金属バットを使う徹底ぶりで、上のカテゴリーでも活躍できる打者育成に努めている。
技術を習得するには若い方がいい。前橋中央ではそうした思いから選手に低反発バットを使用させている。国際規格に準じた製品を輸入しているといい、とにかく飛ばないという。「日本のバットと比べて飛距離で10メートルくらいの差があります。バットの先端部分で捉える感覚が養えますし、打球が飛ばないから振るようになります。公式戦では一般のバットを使うので選手は大喜びです」と春原太一理事長は語る。
よく飛ぶとされる日本の金属バット。高校生が甲高い金属音を響かせて甲子園で放つ一発は、プロ選手でも及ばない位置に着弾することもある。ただ、インパクトの瞬間を見れば、ボールを捉える位置が、プロ選手に比べてバットの手元側にあるのが一目瞭然。木製バットで飛ばすには、より先端部分でとらえないといけないことが分かる。
前橋中央で使用している低反発バットは、そうしたことを肌感覚で得られる。「中学生という大事な時期に体に染み込ませてほしい」と春原さんは願う。高校野球では2024年から低反発バットが導入される。早い段階で飛ばないバットを使っている選手は、それだけでアドバンテージになるだろう。
守備練習でもバックハンドやランニングスローなどは“基本”の位置付け。ポジションも固定することなく、様々な守備位置を経験させる。「前橋ボーイズ」を率いる富田恭輔監督は前橋育英で2013年夏の甲子園優勝を経験した。だが、「高校ではファーストしかできず苦労しました」。自身の経験も踏まえ、選手の選択肢を広げることに努める。
目の前の勝利にこだわるのではなく、見据えるのは選手が高校以上のカテゴリーでいかに飛躍できるか。選手の将来を第一に考えて指導している。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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