【高校野球】指導者であり教育者 横浜・渡辺元智監督が伝える言葉とは

最後の夏の戦いが注目される渡辺監督

 甲子園で春夏5度の全国制覇を遂げている横浜高校・渡辺元智監督(70)が、今季限りで勇退する。最後の采配をひと目見ようと、光明学園相模原との初戦が行われたサーティフォー保土ヶ谷球場には多くのファンが足を運んだ。内野は満員となり、外野席は解放された。

 試合は2回に1点を取るも、2010年には準々決勝まで進出した実績のある光明学園相模原から追加点を奪えず、苦しい展開に。「周りがね、ちょっと騒ぐから、選手がちょっと硬かったのかもしれないね」。指揮官は自身の去就問題の影響にも言及したが、その後は主軸の公家の本塁打などで圧倒。9-0、7回コールドで発進した。

 何度も辞めようかと思うタイミングはあった。それでも「私を慕ってきてくれた選手もいるから、簡単に辞めるわけにはいかない」と指揮官。参謀役だった小倉清一郎コーチが昨年で退任した時も、「2人同時に辞めたらチームが混乱する」と残ることを決めた。退任後、総監督として見守ることにしたのも、生徒たちのことを思ってのことだった。体を壊し、入院しても、指導者としての気持ちが上回った。

 高校野球関係者は口をそろえる。「渡辺さんは、教育者。小倉さんは野球の頭脳」と。2人の良さがかみ合ったことで、横浜高校は、春夏連覇を遂げるほどの強豪校へと成長していった。

 神奈川・能見台にある横浜高校の野球部グラウンド。室内練習場にあるホワイトボードには、こう記されている。

「目標がその日、その日を支配する」

 1998年のエース、松坂大輔(現在ソフトバンクホークス)が、プロ入りした後、座右の銘として明かしていたことがあった。松坂は横浜高校でその言葉と出会っていた。元々は、教育者・後藤静香氏の言葉で、渡辺監督が若いころからずっと胸に秘めている言葉だった。何事もなく1日を過ごしていてはいけない、自分のゴールを見て生活することで、人生は変わっていくという思いを伝えたかった。高校野球ならば、メンバー入りをする、スタメンを勝ち取る、試合に勝つ、甲子園に出る――。考えて、1日を行動するように願っていた。

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