“32年ぶり”に活躍する外国人捕手 マルティネスの魅力とは…たゆまぬ努力を示す数字
初のオールスター出場など新天地で躍進する日本ハム・マルティネス
今年、中日から日本ハムに移籍したアリエル・マルティネス捕手が、開幕から主力打者の一人として出場を続けている。日本では珍しい外国人捕手として攻守にわたって奮闘し、その活躍が認められて自身初のオールスター出場を果たすなど、新天地で大いに躍進を遂げている。マルティネスのこれまでの球歴や、各種指標に基づいたプレーの特徴を紹介したい。
マルティネスは2018年に育成選手として中日に入団。2年間は2軍で研鑽を積み、3年目の2020年に支配下登録を勝ち取る。同年は1軍で39試合に出場し、打率.295、出塁率.385、OPS.806を記録。持ち前の打撃センスの一端を示した。
翌2021年は打率.244、OPS.657とやや成績を落としたが、2022年は82試合に出場し、打率.276、8本塁打、OPS.787と復調。同年は捕手としての出場は一度もなかったが、外野手や一塁手として活躍の場を広げた。6月18日には値千金のサヨナラ打を放つなど、随所で存在感を示した。
2023年からは日本ハムに活躍の場を移し、自身初の開幕スタメン入り。序盤戦は指名打者や一塁手としての出場が主だったが、5月以降は捕手としての起用が徐々に増加。前半戦終了時点で自己最多の11本塁打を放ち、OPSも.805と、攻守にわたって出色の活躍を見せ、今やチームに欠かせない存在となりつつある。
チームにとっても貴重な「ボールを見極めるスタイル」
マルティネスが記録してきた年度別の指標を見ると、通算打率.267に対して通算出塁率が.354、打率と出塁率の差を示す「IsoD」は4シーズン中3シーズンで.090以上。これらの数字は、マルティネスがキャリアを通じて高い割合で四球を選んできたことを証明している。
一方で、打席での選球眼を示す指標の一つである「BB/K」は通算で.405と、決して高いともいえない。多くの四球を選ぶ一方で、三振もやや多いという傾向を示すこの数字は、マルティネスがじっくりとボールを見極める打撃スタイルの持ち主であることの表れといえよう。マルティネスの存在は、打線にアクセントを加える意味でも貴重といえる。
また、真の長打力を示す指標とされる「ISO」は、2023年に自己最高の.204。今季のマルティネスは前半戦終了時点で自己最多の11本塁打を放っているが、長打力が向上していることは指標においても示されている。さらに、1本塁打を打つのにかかる打席数を示す「AB/HR」も、2023年は18.73とキャリア最高の数値だ。過去3年間がいずれも30〜40台だったことを考えれば、今季は本塁打を打つまでのスパンが大きく短縮されていることがわかる。
マイク・ディアズ以来の外国人捕手としての活躍
マルティネスは、捕手としての守備面でもチームに貢献している。今季から先発に転向した北山亘基投手が先発登板した9試合のうち8試合で、マルティネスが先発マスクを被っている。前半戦終了時点で5勝を挙げ、防御率2.56と安定した投球を続ける右腕の活躍に、マルティネスが大きく寄与しているといえる。
また、加藤貴之投手とは6月14日のDeNA戦(横浜)で初めて先発バッテリーを組むと、そこからコンビを組んだ3試合は全て、6.2回以上を投げて3失点以下と好投を引き出している。さらに、上沢直之投手と初めてバッテリーを組んだ6月16日の中日戦(バンテリンドーム)でも、古巣相手に好リードを見せ、8回1失点の快投につなげた。チーム内における捕手としての信頼感が、日に日に高まっていることを示している。
パ・リーグにおいて外国人捕手が活躍したのは、1990年、1991年に捕手として出場したマイク・ディアズ氏(ロッテ)が最後。投手との意思疎通が難しいことが要因として挙げられるが、その点、マルティネスは22歳で来日し、日本球界で捕手としての経験を積んできた。現在の活躍は、言葉の壁を乗り越え、異国の地で続けてきたたゆまぬ努力の結晶でもあるだろう。
マルティネスは現時点で27歳と、さらなる成長も期待できる年齢だ。32年ぶりにパ・リーグで活躍を見せている外国人捕手として、今後も攻守にわたってエスコンフィールドを沸かせる姿に期待したいところだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)