大谷翔平は「好きな時にノーノーできる」 元同僚捕手が驚嘆した“遊び感覚”

エンゼルス・大谷翔平(左)とカート・スズキ【写真:Getty Images】
エンゼルス・大谷翔平(左)とカート・スズキ【写真:Getty Images】

15年のキャリアを終え、現在は子どもたちを指導するカート・スズキ氏

 昨季を限りに15年のキャリアに幕を下ろしたカート・スズキ氏は今、ロサンゼルス近郊で9歳以下の子どもたちが集まる野球チームで監督を務める。ナショナルズ時代の2019年にはスティーブン・ストラスバーグやマックス・シャーザーら名投手とバッテリーを組んでワールドシリーズを制覇。投手陣から信頼の厚い球宴捕手は、“コーチ・カート”として新たな野球人生を歩み始めた。
 
 野球が大好きな子どもたちと接していると、現役時代に忘れかけていた野球の楽しさが蘇ると同時に、メジャー選手が子どもたちに与える影響の大きさも感じずにはいられないという。特に、ロサンゼルス近郊という場所柄、元チームメートでもあるエンゼルス・大谷翔平投手が持つインパクトの大きさには驚くばかりだ。

「子どもたちから毎日『ショウヘイは普段どんなことをしているの?』『ショウヘイはどんな人なの? やっぱりクールなの?』って質問攻めにあっているよ(笑)。でも、子どもたちが影響を受けるのは当然のこと。僕に言わせれば、きっと次なるショウヘイ・オオタニが登場するまで、もう100年はかかるはずだから。体格、パワー、投球術、体のケアや準備の仕方まで、彼の舞台裏を垣間見ることができたのはラッキーだった」

 スズキ氏自身、一緒にプレーした2年間で驚かされることが何度もあった。その中でも、子どもたちに決まって伝えるのがオン・オフの切り替えの上手さだ。

「マウンド上ではとてつもない活躍をするのに、普段はチームメートとじゃれ合ったり、クラブハウスの中ではジョークばかり飛ばす、ごくごく普通の人間。一緒にいて楽しい仲間の1人なんだ。それがグラウンドに足を踏み入れた途端、スーパーマンに大変身するんだ。この切り替えの上手さこそ、ショウヘイをとてもスペシャルな存在にしているんだと思う」

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エンゼルスなどでプレーしたカート・スズキ氏【写真:編集部】
エンゼルスなどでプレーしたカート・スズキ氏【写真:編集部】

マウンド上の大谷は“遊び感覚”?「何かゲームを楽しむ感覚でいるのでは」

 大谷はこれまでメジャーで10人を超える捕手とバッテリーを組んできたが、スズキ氏はマックス・スタッシーに次いで2番目に多い16試合で剛球を受けた。捕手が位置するホームベースのすぐ後ろは、言ってみれば、投手と打者の勝負を間近に味わえる“特等席”だ。もちろん、捕手も勝負に関わる当事者の1人だが、大谷が意のままにボールを操って打者を手玉に取る様子を見ていると、少しだけ傍観者のような気分になることもある。

「マウンド上のショウヘイは遊び感覚というか、何かゲームを楽しむ感覚でいるんじゃないかと思うんだ。『今日はどんなことできるかな』『今日はこの球種でどこまで行けるかやってみよう』って楽しみながら投げているというか。だから、本気を出して集中力を高めれば、いつでも好きな時にノーヒッターができるはず。それだけの能力は十分にあるからね」

 そんな大谷でも毎回3者凡退に抑えられるわけではないのが、野球というスポーツの面白さだろう。二刀流のスーパースターであっても、ヒットを許し、本塁打を浴びることもある。スズキ氏はマウンド上の大谷がヒットを打たれた直後、本気モードに入る瞬間をたびたび目撃した。

「ヒットを打たれると本気モードのスイッチが入るようだ。その後で打席に立つのは避けたいところだね。凄いボールで攻められるから(笑)。ショウヘイは抜群の記憶力の持ち主でもあって、それぞれの打者に対してどんな投球をしたのか、どの球をどのカウントで投げたのか、そういった細部までしっかり覚えている。だから、打者は何もさせてもらえなくなってしまうんだ」

 得点圏に走者を置いた時は、さらにギアが一段アップする。あと一歩で失点するかもしれない土壇場での危機管理。状況に応じた投球を見極め、それを確実に試合で遂行するのが一流投手の証でもある。

「失点のピンチを迎えると、ショウヘイは『ノー、僕から点を奪うことはできないよ』とばかりにスイッチを切り替え、100マイル(時速160キロ)を超える剛球やえげつないスライダーなど、バットがかすりもしない球で抑えてしまう。これがgoodではなく、greatな投手の証。シャーザーやストラスバーグから遊び心を感じたことはないけれど、彼らは素晴らしい気迫の持ち主で、初球からプラン通りの投球を遂行する。プラン通りに球を投げられるから、重要な場面でも決して裏切ることがない。この安定感もまた、素晴らしい投手の資質だろう」

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異次元の活躍…その裏に隠されたたゆまぬ努力

 メジャー6年目の今季、大谷の二刀流挑戦はかつてないほどの充実ぶりを見せている。8月6日(日本時間7日)を終えた時点で、打率.306、40本塁打、82打点、投げては9勝5敗、防御率3.32。“6月男”の異名に違うことなく、投打に異次元の活躍を披露した6月に続き、7月も2か月連続でア・リーグ月間MVPに輝いた。まるでマンガや映画の世界でしか存在しないような活躍ぶりを見ると、「別の惑星から来た」という評価も頷けてしまうだろう。

 スズキ氏もまた「あれほどの体格、運動能力、投打両面での能力を持っているんだから、別の惑星から来たとしか思えない時もあるよね」と話すが、同時に間近に接してきた元チームメートだからこそ、大谷が人一倍の努力を惜しまない天才であることも知っている。

「ショウヘイはいつもジムで懸命にトレーニングをしているし、ストレッチやマッサージなど体のメンテナンスも欠かさない。現役時代には、登板後は3日ほど疲れ切ってしまう投手や、筋肉痛のような痛みに襲われてしばらく動けない投手を見てきた。だけど、ショウヘイは登板した翌日に打席に立ってホームランをかっ飛ばしてしまう。そんなの見たことないよ。ただ、これは毎日しっかり調整に取り組んでいるからこそ成し得る業。スペシャルなことだし、努力と根性が求められること。信じられないかもしれないが、ショウヘイだって疲れる時はある。でも、グラウンドでは疲れは一切見せることなく、全力でプレーし続ける姿は素晴らしいと思う」

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 長いキャリアの締めくくりに大谷のような選手と出会えたことを「幸せ」だというスズキ氏。現在指導する9歳以下の“未来のスーパースター”たちが懸命にプレーする姿を見ると、野球に対する情熱に火がつくこともあるという。もし、現役復帰を果たし、打者・大谷翔平と対戦する機会が巡ってきたら、捕手としてどんな配球で攻めるのだろうか。

「投手にボール球を放らせて、それを振ってくれることを願うしかない。そんな球でもヒットにしてしまうと思うけど(笑)。彼は420フィート(約128メートル)も打球を飛ばす能力を持っている。色々な球種を織り交ぜながら攻めることにはなるだろう。頭のいい選手でもあるから、同じ球種を2度同じ場所に投げたら、すぐに捉えてしまうはずだ。いち早く作戦を見破って打ち頃のボールを見つけるだろうから、無駄球は命取りだね」

 人懐こい笑顔がトレードマークのスズキ氏は、表情豊かに次々と言葉を紡ぎながら大谷について語ってくれた。その様子からスズキ氏もまた、大谷に魅せられた1人と言っていいだろう。野球を楽しむ子どもたちのみならず、野球の厳しさを知る元チームメートまで虜にしてしまう二刀流・大谷翔平。やはり誰もがスーパースターと呼ぶに足る逸材だ。

□カート・スズキ氏が大谷翔平選手について語るインタビュー動画全編はこちら
https://abema.tv/video/episode/239-205_s70_p113

【実際の映像】“二刀流”を間近で見てきたからこそわかる! カート・スズキ氏が語る大谷翔平の"凄さ"

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