初の女子国際大会でV ポニー15U日本、“平等”が生んだ短期間での「対応力」
ポニーリーグ初の女子野球国際大会で15U日本が米国を圧倒
栃木県を舞台に、7月31日から5日間の日程で開催された、ポニーリーグ初の女子野球国際大会「ECCインビテーショナル SSKカップ ポニー・ガールズ・ベースボール・ワールドシリーズ」。4日に行われた15U(15歳以下)の部の決勝戦で、15U日本が米国を14-2で破り、初代女王の座に輝いた。優勝への鍵となったのが、選手たちが実戦の中で示した即座の“対応力”だ。
まさに打線が“線”でつながった、鮮やかな先制攻撃だった。15U日本は初回、先頭の樺沢愛理(三鷹ポニー)が中前打で出塁すると、すかさず二盗。2番・鯖江暢(ポニー湘南クラブ)が犠打で送り、3番・西村悠奈(市原ポニー)が中前打を放って先制した。さらに4番・福田美羽(羽田アンビシャス)が左翼線三塁打、5番・本田優香(久留米ペトリオッズ)がスクイズと続いてこの回3点。大量14得点への口火を切った。
前日の準決勝(ダブルエリミネーション方式)では、同じ米国相手に8-5の接戦。それだけに、選手たちの緊張感も大きかっただろうが、「初回の3点の取り方が良かった。集中力が高く、主導権を握れた」と武島信幸監督。チームの集合は開幕前日、しかも2時間練習しただけで大会に突入したとは思えない連係ぶりだったが、「みんな野球をわかっているし、大会の中で日々成長してくれた」と選手たちを称えた。
主将を務めた福田も、それに同意する。「普段から男子と野球をしているので、(プレーの)細かい部分は結構、理解している。だから、集まってすぐに連係できたと思います」。ショートでの堅守が光った鯖江もまた、「サインを決めても、すぐに覚えて実践できました。みんなエラーも少なくて、男子の中でやっているだけあるなと思いました」と語る。
ポニーリーグは複数チームを編成して公式戦にエントリーできるなど、選手全員が試合出場の機会を得られて、実戦経験を積めるのが特徴だ。「練習も誰でも平等にできるし、自分に合ったチームで主役になれる制度があったことが、ポニーを選んだ理由です。その中で世界一になれたことがうれしい」と、福田は微笑んだ。
正捕手の怪我で急きょ「小学生以来」の扇の要に
短い準備期間でも一丸となって優勝を果たせたのは、この「実戦の中で学ぶ」というポニーリーグの理念の中で培った“対応力”の賜物といえる。それを一番に示してくれたのが、この日捕手として出場した中学2年生の西村だ。
正捕手は本来、多田花(房州ポニー)だったが、大会初戦で右肩を負傷。代役として「スローイングがいい」(武島監督)という西村に白羽の矢が立った。普段は二塁手か中堅手で、マスクをかぶったのは「小学生の時に、2試合くらいやって以来」(西村)。それでも、ワンバウンド投球をきちんと止めて投手陣をリード。先制打を含む2安打3打点と打棒も振るった。
「配球は、イニングの始まる前の投手のピッチングを見て、あとは打者の雰囲気を見ながら決めました。米国の選手は体格も良くてスイングもすごかったけれど、投手との相性も良かったし、うまくコミュニケーションを取れたと思います」
小学1年生で野球を始め、「全員で1点、1アウトを取りに行き、みんなで勝てることが楽しい」と、その魅力に取りつかれたという西村。この決勝戦は、まさにそんな魅力を凝縮した一戦だった。「(中3の)先輩たちがどんどん話しかけてくれて、すぐに仲良くなれたのも大きかったです」。
国際試合という独特の緊迫感の中、皆が1つになり花を咲かせた今回のポニー女子代表。これもまた、それぞれを成長させる貴重な“実戦経験”となったはずだ。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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