全国V腕“直伝”の魔球は「一瞬止まった」 敵打者も唖然…日大三エースの「生命線」
日大三のエース・安田虎汰郎が2安打で今大会初完封
変幻自在の投球で今大会初完封を飾った。第105回全国高等学校野球選手権記念大会が9日、阪神甲子園球場で行われ、大会4日目第2試合は日大三(西東京)が3-0で社(兵庫)を破り、5年ぶりの初戦突破。エース右腕・安田虎汰郎投手(3年)が投じる“魔球”に「一瞬ボールが止まった」と、社ナインも脱帽だった。
150キロは投げられない。それでも、130キロ後半の切れのある直球と伝家の宝刀・チェンジアップが冴え渡り、社打線を翻弄した。5回2死まで完全投球を見せ、走者を許しても慌てることなく冷静に打者を打ち取った。9回までスコアボードに「0」を並べた安田は「公式戦で完封するのは初めてなのでうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
安田は2011年夏の甲子園を制した時のエース・吉永健太朗氏に憧れ同校に入学。大先輩の決め球・シンカーと同じように沈むチェンジアップを習得し、今年に入って本人から直接指導も受けたという。この日の奪三振は5個だったが、7回2死二塁のピンチではチェンジアップを続け、空振り三振に仕留めピンチを脱した。
浮き上がって沈む軌道を描くチェンジアップは「生命線。芸術ですよ」と自らも惚れこむ。地元の大声援を受け、3季連続出場の社も、分かっていても打てない“魔球”に苦戦した。
散発の2安打に封じられた山本巧監督は「非常に丁寧に投げていた。チャンジアップはもちろん、直球も上手く捉えることができなかった」と完敗を認めた。5回の第2打席でチーム初安打となる左前打を放った年綱皓外野手(3年)も「チェンジアップは想定していたがそれ以上。ボールが一瞬、止まったように……。目線から外れて落ちていく」と語り、好機での三振を悔やんだ。
今年4月に就任した三木有造監督に甲子園初勝利を届けた右腕は「野球人生で1番いい投球。チーム全員で勝ちを1つずつプレゼントしようと話していた。これからも1つ1つ勝っていきたい」と納得顔。日大三が3度目の夏制覇に向け、好スタートを切った。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)