“仮面ライダー兄弟”の夏終わるも「一生の宝物」 名門打線も認めた1年生右腕の素質
名門相手に接戦繰り広げるも…兄弟バッテリーの夏終わる
第105回全国高校野球選手権大会は14日、阪神甲子園球場で大会9日目が行われ、第1試合では鳥栖工(佐賀)が3-1で日大三(西東京)に敗れ、3回戦進出はならなかった。兄・松延晶音(あぎと)捕手(3年)と弟・響(ひびき)投手(1年)の“仮面ライダー兄弟バッテリー”の夏は幕を閉じた。
初出場ながら19回出場の名門・日大三を最後まで苦しめた。5回まで1-1と互角の勝負。6回に1点を奪われたものの、7回からは弟の響がマウンドへ上がると、球場からは大きな拍手が沸き起こった。
特撮テレビドラマ「仮面ライダー」シリーズに登場するキャラクターと同じ名前の兄弟が、強打の日大三打線に挑んだ。いきなり2本のヒットを打たれ、無死二、三塁のピンチを背負う。だが兄弟は落ち着いていた。「(2人でやれる)最後の試合になるかもしれないから、楽しんで投げてこい」。兄・晶音からの頼もしい一言。その思いに応えるように、5番を三振、6番、7番を内野ゴロに打ち取りピンチを脱した。
8回に1点を失ったものの、自己最速の144キロも飛び出すなど、1年生とは思えないほど堂々としたものだった。最後まであきらめず2点を追いかけたが、届かず。兄弟2人で挑んだ夏は幕を閉じた。それでも、力は十分通用した。響は「詰まらせることができたし、変化球も反応していた。自分の投球は全国でも通用するかもしれない」と、全国制覇の経験も持つ名門との対戦に手ごたえを感じていた。
名門・日大三の主砲も認める1年生右腕のマウンドさばき
1年生でも気持ちで負けることはなかった。甲子園という大舞台で本来の実力を発揮することは、3年生であっても難しい。それでも「成長させてくれた」と実力以上の力を発揮して見せた。この強心臓ぶりには、名門の主砲たちも認めざるをえなかった。
「『打ってみろよ』という気持ちを感じた。押し込まれた」と3番の二宮士主将(3年)が驚きを語れば、4番の針金侑良外野手(3年)も「伸びがあって速かった。堂々としていて、打ちづらさがあった」と、1年生とは思えないほどの投げっぷりの良さとその実力を称賛した。
それでも響がここまで活躍できた理由には、捕手として引っ張り続けた晶音の力があったに違いない。どんな場面でも落ち着いて構える。ピンチになればマウンドへ駆けつける。頼りになる兄との時間は「幸せでした」と振り返れば、「(2人の時間は)一生の宝物です」と晶音は目を赤くする。
来年からはもう兄はいない。この夏、2人で戦い抜いた最高の経験と、大きな感謝を胸に、弟はまたここに戻ってくることを誓った。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)