来春には“大きな転換点”も 慶応Vは「新しい姿」象徴…変わりゆく高校野球の常識
「高校野球の常識を変える」慶応が107年ぶりの優勝
第105回全国高校野球選手権は、神奈川代表・慶応の107年ぶりとなる優勝で幕を閉じた。今年の慶応は主将の大村昊澄内野手(3年)が「高校野球の常識を変える」との目標を掲げ、選手個人の自主性を重んじ、野球を“楽しむ”スタイルを大切にしてきた。今大会は同校の長年の伝統でもある“自由な髪型”も話題となる中、甲子園の頂点に立って自分たちの野球を証明した。
森林貴彦監督は「優勝することで新たな可能性、多様性を示せればいいと。常識を覆そうと頑張ってきた。うちの優勝から新しいものが生まれればうれしい。高校野球の新しい姿につながる勝利になったと思う」と喜びを語った。大村も「さんざん大きなこと言ってきて、笑われることもあって、いろいろ言われることもあった。強い思いで今まで頑張ってきたので、つらい思いとかが全部報われた」と胸を張った。
時代の移り変わりに伴い、近年は高校野球、甲子園大会の変化も著しい。今大会は、例年にも増して髪型自由の高校が多く、試合後の取材時には、髪をかきあげて汗を拭う選手たちの姿が目立った。
日本高野連が全国の高校に実施した調査よると、髪型を「丸刈り」としている学校は26.4%で、5年前の76.8%から大幅に減少。今大会は開幕戦に登場し、4強入りした土浦日大(茨城)を始め、決勝進出の2校も髪型は自由。“強さと髪型は関係ない”ということが、結果で示された形となった。
仙台育英は“継投策”で今年も盤石の勝ち上がり
2020年の選抜からは「1週間で計500球」という球数制限が導入され、早くも3年が経った。昨夏の大会では仙台育英(宮城)が5投手の継投で優勝し話題に。同校は今大会でも好投手を複数揃え、決勝まで勝ち上がった。優勝した慶応も、エースの小宅雅己投手(2年)が準決勝で完投していたこともあり、決勝は継投策で仙台育英打線を封じた。
公立高では複数の投手を揃えるのが難しいという事情もある。ただ、甲子園の頂点を目指すのであれば、継投を見据えたチーム編成が求められる時代となっている。
猛暑の影響で負傷する選手が目立つようになってきたことから、今大会からは5回終了後に10分間のクーリングタイムが導入された。指導者からは賛否に関して様々な声が上がったが、選手を守る取り組みの1つとして、今後も検討が重ねられていくはずた。
また選手以外にも、アルプス席ではハーフパンツの衣装で応援するチアリーダーも見られた。盗撮被害を防ぐための措置だが、これも電子機器やネットが普及した現代ならではの変化と言える。
来春の選抜からは“飛ばない”新基準の金属バットの使用が始まり、大きな転換点となる。時代とともに急激に変化する“高校野球の姿”。数年後にはまた、様々な常識が生まれているだろう。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)